2015年04月02日

となりの山劇 No.112 DPEの謎 その2<フィルムの話>

となりの山劇シリーズ


無駄話は永遠につづく


 先週はいかに501を購入したかというような話で終わってしまった。何だかカメラの話になると長くなるんだよなー。つい。でも、もう少しカメラの話が続きます。

 という事で一眼レフの方はこの時に購入した501が今だに現役であります。しかし。例えば車にもセカンドカー、バイクにもセカンドバイクがあるように、カメラにもセカンドカメラがあるのです。プロのカメラマンでも、撮影の合間の気軽なスナップ用にコンパクトカメラを使用しているみたいです。
 
 当時、自分のセカンドカメラはそんな大したカメラでは無く、ただ単に「安物」のカメラだったのです。その証拠に、あんまり写りが良くない。(笑)

 でも、バイクに同伴するカメラってのはそういうカメラ達で、これがある時に旅先での写真がこれでは勿体無いと思うようになり、せっかく写すなら少しでも高品質の写真を写したい。今考えると、これを発端にして次々とコンパクトカメラを購入しては手放すといった無限地獄に突入してしまったのです。そして何台目かにしてたどり着いたのが、フジの『トラベルミニ』。このカメラはコンパクトな本体に28ミリと45ミリという二重焦点のレンズを持っていて、これが意外な程写りが良かった。結構ピントも合った。

 この頃からかなー。以前と比べると写真撮影する枚数が飛躍的に多くなり、今度はコストの視点からも、いわゆる『ムダ写真』を無くしたいと思うようになってきた。つまり、『ピンボケ』や『露出ミス』といった写真を無くしていこうという方向になってきた。写真関係の雑誌を読むようになったのも実はこの頃から始まった。何でもそうだけど、興味を持って雑誌を購入するようになると、知識がつくんだよね。それまでは『被写界深度』なーんて考えもしなかった。ホント。

 それでそういった本を読んでいくと、写真とは要するにリバーサルの事であるらしい。ネガの事なんてこれっぽっちも書いてない。どの入門本を読んでみても、『先ずはリバーサルで腕を磨け』とある。

 でも、ご存知のようにリバーサルの世界はハイコストの世界である。日頃からローコストの世界で生きてきた自分としてはそういったハイコストの世界に飛び込めと言われても、一歩も二歩も躊躇してしまう。ハイそうですかとはいかないのである。その辺りが現在でもトラウマのように意識の奥深くにこびりつき、フィルムを購入する際にはフジのISO100の、しかも3本とか5本とかいうパックしか視界に入らないという情けない体質になってしまったのであります。

 最近たまに同じ趣味を持つような友人なんかに自分で撮影した写真を見せびらかす事がある。結局、そういうトコロが写真を写す楽しみだったりするのです。

 そういった時に必ず「リバーサルはやんないの?」と聞かれる。でも、おそらく今後も『コスト』と『経済事情』の面で気にしなくて良い状態にならない限り、やらないだろう。理由は以下の通り。先ずはフィルムが高い。36枚撮りで1000円以上する。次にこのフィルムを『惜しげもなく』投入しなくてはいけない。1カットの撮影で、段階露出分を含めて最低でも6枚は使いたい。すると、唯でさえ高価なフィルムがたかだか6カットで1本使用してしまうという計算になる。これにアングルを変えたりしていると、1カットであっという間に2~3本は消費してしまう計算になる。ウゲ。

 しかも、撮影済みのフィルムは当然の事ながら、現像しなくてはならない。通常、いかなるフィルムも、現像しなければ撮影結果を確認する事が出来ない。この時の現像というのは、文字通り現像のみである。同時プリントみたいにプリントが仕上がって来る事はない。

 現像には2種類の仕上がりを指定できる。ネガみたいな袋に入れる仕上げを『スリーブ仕上』と言い、スライドの様な仕上げを『マウント仕上』と言う。当然ながら手間がかかる分『マウント』の方が高い。全ての撮影写真に自信があって、ムダ打ちしない人はともかくも、ここで普通の人はスリーブを選択するようである。そして、スリーブで仕上がった写真の中から気に入ったコマのみをハサミで切り取って、マウントにする。めでたくマウントとして採用されるコマは、先程の理由からせいぜい一本で6~10枚程度である。

 さらに、その中から特に気に入った写真があると、ここで初めてプリントする。これがまた高い。一般に『L版』と呼ばれているサイズでプリントしようとすると、1枚130円かかる。ネガプリントのようなお手軽大量生産システムが存在しない為、プリントサイズが大きくなればなる程、信じれない程高価になってゆく。これがリバーサルの世界である。

 さて、ここで簡単にポジ(リバーサル)とネガの比較をすると、色の再現性の点ではネガよりもポジの方が上。粒子状もポジの方が上。この事はつまり『大きく引き伸ばす』時に差が出る。逆に言うと、大きく引き伸ばさない限り大きな差は出ないとも言える。

 それから、専門用語で『ラチュード』という言葉があって、一般にポジはラチュードが狭く、ネガはラチュードが広いという。これを平たく言うと、ポジは光の明暗に敏感。ほんの1絞り変えるだけで全く違った写真になる事もある。ネガは少しくらい明暗が外れてもフィルムがカバーする。色も変わらない、とも読み取れる。でも、実際にはどうなっているのかワケわかんない言葉ではある。この言葉、次回辺りにもう一度登場する。心して覚えておくように。

 次に取り扱いによる違いもある。ネガは基本的にユーザが触れる事は無い。焼増しの注文でさえも袋の上から持つだけである。ところが、ポジの場合は『触れる』機会がすごく多くなる。スリーブからコマを切り離す時、ビュワーやルーペで画像を確認する時。そして作品として保管管理整理したりする時。大抵の場合ポジは『裸』で取り扱わられる。ホコリやゴミ、指紋やキズが着きやすいのである。自分の唾液でさえも気になる人は、手術する医者のごとく、帽子にマスク、消毒済みの指紋がつかない特殊な手袋を着用する。手にはメスの代わりにピンセットとハサミ。・・・というのは冗談。とにかくそのくらいに気を遣うのである。

 次に保管の比較。ネガの場合は基本的にプリントの保管である。プリントの保管は当然ながらアルバムが基本になる。ところが、このアルバムのコストはどんどん下降の一途にあり、同時プリントの際に付属するアルバムで良しとするならば、『タダ』である。

 これがポジになると、いわゆる『プロ用』の用品が軒を連ねている。当然プロが使うのだから、安い訳はない。先程の写真整理用BOXでさえもプロと全く同じ製品を使用することになる。この世界に安物は、無いとは言わないが、誰も使わない。そんな安物を使用するくらいなら最初からポジを選択しないって。ポジを使用すると言うことは『プロ用』の用品を使用できるという辺りに最も有り難みがある。と断言したら失礼だろうか。

 もう一つだけ。それは撮影後の楽しみ方の事。ネガの方は極端に言えば一度同時プリントしたら、フィルムはそれっきり。多少の焼増しはするかもしれないが、もう二度と日の目を見ない。プリントの整理はアルバムが基本になる為、とてもお手軽であり、何よりも気軽に他の人に見てもえるという利点があるし、イザとなったらネガからもう一度焼き直せばいいという安心感から、ラフに取り扱う事が出来る。(←保管してあればの話)

 ところがポジの方は、これは実際に見てもらと理解しやすいのだが、取り扱いがデリケート。まるではれ物に触るように取り扱ってしまう。つい、フィルムに手を触れようなものなら、背中から所有者の熱い無言の視線が突き刺さる。なにしろフィルムが露出されている。しかもそのままでは暗くて見にくいので、大抵の人は蛍光灯や明るい窓に向かってかざすとかしないと画像が見えない。

 ポジを撮影する人は後ろから光を当てて見る『ビュワー』という道具を持っているので、これを机に置いて画像を見る。このビュワーでポジを見ると、その鮮やかな色彩に驚くと思うが、いかんせん画像が小さい。それならプリントするしかないが、コストが高いので全部が全部プリントする訳にもいかない。

 保管や移動の点からも差が出る。何度も繰り返すように、ネガのプリントはラフなもの。ポジは保管場所から移動方法までも気をつけなくてはいけない。とても面倒くさいのである。多分、自分がポジを始めたら一度保管したポジは2度と出さないであろう。それどころか、何処に整理したか忘れてしまうに違いない。
 
 何やら今回はいつの間にかポジとネガの比較対決のような話になってしまった。とにかくも、以上のような理由で僕の撮影の中心はネガなのです。どれもこれもビンボーが悪いんだろうな。きっと。ちなみに、今回のポジネガの比較は35ミリの場合を想定しています。ポジには35ミリの他にブローニー版とか4×5とかあるんですけど、フツーの人はやりません。だって、機材の価格が2ケタは違いますもん。

 いったい今回の何処がDPEの話なんだか?これではまるで『「DPEの謎」の謎』?



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posted by サンタ at 17:42| Comment(0) | 本家山劇/となりの山劇 | 更新情報をチェックする
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