1987年7月10日(金)
朝の6時頃に一旦目が覚めたが、外を見たら一面の白世界だったのでそのまま二度寝してしてしまい、きちんと起きたのは7時過ぎだった。その時、たまたま一瞬だが霧が晴れて遠くまで見渡す事ができた。その時になって初めてこのキャンプ場の周辺がどのような地形になっているか判明した。昨晩、時折ドドーンという波の音が聞こえると思ったら、そこは本当に岬の先端で、バンガローの5メートル後ろは崖になっていたのだ。我々は、今がチャンスとばかりに散歩と称して探検に出掛けた。
霧が晴れた一瞬の景色
昨晩から断続的に鳴り響いていた『霧笛』は、もう少し岬の先端にあり、岬の最先端へ行くにはそのすぐ横を通る必要がある。仕方がないので強烈無比の「音間」を狙って通り過ぎる。岬の先端に出ると、岩に海鳥が等間隔ですき間無く並び、まるでNHKの特番でも見ているようだった。
当時は波打ち際まで降りることが出来た
高台から海を眺めると、かつてムツゴロウこと畑正憲氏が2年間生活していたという『ケンボッキ島』が見える。中学生の頃に読んだ『無人島記』の中に出てくる島だ。当時は「遠いなー」と思いつつ地図を眺めていただけで、一度は行ってみたいと憧れつつも北海道のそれも道東という場所を理解できるはずもなく、それは夢物語のはずだった。しかしそれから10数年、ずっと見続けた夢は本当に実現したのだった。
8時を過ぎると再び霧が広がってきて、何も見えなくなってしまった。我々はこれ以上ここにいても無駄だと判断し、取り急ぎ出発することにした。次に目指すは開陽台だ。同行者は自分のTWとカトーのセローとBMWの3台である。
岬を出発し、道道1020号線伝いに走り、国道44号線と交わる辺りでようやく霧が和らいできた。そこからは適度にアップダウンする、別海町の長閑な牧草地帯を軽快に走り抜け、中標津町に入った。開陽台はもうすぐだ。
果たして開陽台で念願の地平線が見えたのか?
開陽台の手前は長大な直線道路になっていて、ガイドブックの写真は必ずここで撮影される。開陽台に上る坂を上がりきって左にカーブしている場所で振り返る風景がそれである。
ところが、そのカーブを曲がった辺りから再び霧が濃くなり、開陽台の駐車場に到着する頃には最高濃度の霧になってしまった。気温も下がり、寒い。こんな時は売店で売っていた温かなミルクが有り難かい。無駄とは解っているが、とりあえず展望台に上り周りを見渡すものの、そこには360度の白い壁があるだけ。当然地平線なんて見えるわけない。
BMWと別れたTWとセローは白い世界の開陽台を後にして、知床を目指す事にした。オホーツクの海岸線に出ると、霧は少しは薄くなったが、景色を楽しめる程ではない。景色を満足に楽しめないまま知床横断道路に入り、一気に知床峠に上がったものの、霧で何も見えない。そのまま知床の反対側へ下りていくと、ようやく霧が晴れ、一面に光輝くオホーツク海がいきなり眼前に現れた。
知床の奥に、川全部が温泉だという秘境があるらしい
峠から下りると完全に霧が晴れているようなので、カムイワッカの滝に寄る事にした。ウトロから滝の入り口迄はダートの林道である。路面は硬くてフラットなダートなので、つい油断してスピードを出したらカーブを曲がりきれなくて転倒してしまった。幸いにも怪我も故障もなかったが、油断大敵である。慎重に走るべし。
カムイワッカの滝は川の中を30分程沢登りする必要がある。割とハードだと聞かされていたが、急な岩場などにはロープが用意されていて、慎重に登れば女性でも大丈夫だ。川は上って行くにつれて温かくなり、滝に到着すると滝壷が湯船になっていて、既に数人の先客がいた。
既に川全体がぬるい温泉になっている
温泉を堪能して再び林道に戻り、国道334号線に合流する途中、後ろを走るセローの姿が見えなくなった。しかし、行きでコケた経験を持つTWとしては、林道ダートを走る時は自分の事で精いっぱい。そのまま国道まで走り抜けてからカトーの到着を待つことにした。
暫く待っても来ないので、慎重に林道を再び引き返すと、やっとセローがやって来た。やはり転倒してバイクごと道から落ちて、車の人に助けられたらしい。普通そこまでやると怪我や故障どころの騒ぎではない所だが幸いにも異常はないという。俺達って、運がいい?
暗闇の屈斜路湖にダイビング
合流してからそのまま夕暮れのオホーツクを眺めながらのんびりと知床国道を走っていると、突然夕立が降り出した。その雨は幸いにして一時的なもので、斜里に入った辺りで上がってしまった。本日の宿泊予定地は屈斜路湖の和琴半島にあるキャンプ場を予定している。のんびりしてたらすっかり日が暮れてしまった。距離にしてあと60キロ程。一時間あれば到着するだろう。(笑
何も屈斜路湖でなくても近くにキャンプ場はいくらでもある。そこを何故和琴にこだわるのか。それは『ライダー限定。バンガロー1泊+ジンギスカン食べ放題+朝の牛乳も付いて1000円。露天ブロあり。』という怪しい口コミを信用していたからだ。通常はバンガローに泊まるだけで1400円するらしいので、その噂がとても魅力的に聞こえた。
和琴半島に到着したのは8時頃。受付は6時までと聞いていたが、快く引き受けて貰えた。腹スキスキの僕らは、出された超大盛りのジンギスカンをガツガツと食べ、いきなり満腹になった。噂は本当だった。
指定されたバンガローで荷物を下ろしてほっとしていると、キャンプ場中央で宴会が始まった。本日のキャンプ場利用者は15人程だった。宴会のテンションが次第に上がってくると、誰が言い出したのか露天風呂に入ろうという事になった。暗闇の中、各自のバンガローから殆ど素っ裸で露天風呂に向かって走って行った。確認してないが、その場所には女性は居なかったと思う。
湖畔の露天温泉は意外に熱めで、全員でバカ騒ぎをしているうちに茹だってきた。そこで、これまた誰が言い出したのかそのまま屈斜路湖に次々とに飛び込み、泳いだ。もちろんハダカである。わかっているが、屈斜路湖はとても冷たい。体が冷えると再び温泉に入り、熱くなると屈斜路湖にドボン。全員が飽きるまで繰り返された。
その後は再び3次会の宴会になった。寝たのは何時だっただろうか。
本日の走行距離... 333km
次号その10 再び単独行動、富良野で待ち構えているものは
知床から斜里方面を目指し、最終的には屈斜路湖へ。
- その1 再び北海道の季節が到来!
- その2 出発時の期待と不安は独特のものがある
- その3 とにかくひたすらやることが無い
- その4 下船後は右に進むのか左に進むのかそれが問題
- その5 ニセコ、そして羊蹄山を攻略
- その6 朝からの雨のせいで出発する気分まるで無し
- その7 本日は帯広で連泊です
- その8 朝からご機嫌のダートを走り抜ける
- その9 ライダーのメッカ開陽台を目指す ←今ココ!
- その10 とりあえず札幌に向かいます
- その11 昼過ぎに札幌で集合することになっている
- その12 皆に見送られて小樽へ向かう、そしてフェリーへ
- その13 上陸直前、またしても雨が降ってきた、そして帰宅
- 北海道ツーリング1987 その13
- 北海道ツーリング1987 その12
- 北海道ツーリング1987 その11
- 北海道ツーリング1987 その10
- 北海道ツーリング1987 その8
- 北海道ツーリング1987 その7
- 北海道ツーリング1987 その6
- 北海道ツーリング1987 その5
- 北海道ツーリング1987 その4
- 北海道ツーリング1987 その3
- 北海道ツーリング1987 その2
- 北海道ツーリング1987 その1
- 北海道ツーリング1984 その7
- 北海道ツーリング1984 その6
- 北海道ツーリング1984 その5
- 北海道ツーリング1984 その4
- 北海道ツーリング1984 その3
- 北海道ツーリング1984 その2
- 北海道ツーリング1984 その1
- 東北ぐるり一周18きっぷの旅 1998 その9