1987年7月7日(金)
朝から気温は幾分低めで小雨模様。湖面は深い霧がかったまま。今回ついに支笏湖の全景を見ることが出来なかった。ここで緊急事態が発覚。昨日テントの設営場所を決める際、周囲を良く確認したつもりだったが、夜中の豪雨でいつの間にかテントの下が川になっていた。
「総員撤退せよ!」
号令と共に荷物をストーブがある管理人室に避難させ、次に小雨の中でテントを畳み、最後に我々も管理人室に避難した。管理人室ではたまたまあったカップラーメンを分けてもらい、それを朝食とした。バイクの連泊者はいつの間にか姿が見えない。この雨の中何処かへ出掛けたのだろうか。
朝からの雨で出発するのを躊躇していたら、昨晩のGPZ2人連れも避難してきて4人になった。我々はそのまま暖かい管理人室でダラダラと過ごしていたが、少しでも前進しようという気力がよみがえり、本日のルート検討に入った。当初は夕張鉱山近くの60キロダートコースを攻めようという計画があったが、昨夜から降り続く雨でぬかるみダートになっているのは目に見えている。
「夕張は中止!」
ダート行きをあっさりと諦め、代案として帯広に行こうかという話でまとまった。GPZチームも同じルートで行くというので、本日は3台での作戦行動となった。
随分と管理人室でダラダラとしていたせいで時計はすでに11時を回ろうとしていたが、我々4名計3台の即席チームは小雨が降る中出発した。昨日の国道までのダートを慎重に走る。暫く走ると国道に出たので、安心て苫小牧方面に走り出したのはつかの間のこと。早々と舗装区間が途切れ、支笏国道(国道276号線)は再びダートに変身してしまった。先が思いやられる予感。
寒さに震えながらも何とか帯広に到着
無事苫小牧を通過。このルートを通るのも何だかんだ言って3回目。何度通っても寂しい風景の勇払原野を通過し、途中のドライブインに立ち寄り昼食とした。駐車場には多数の観光バスが駐車している。
雨は相変わらず降り続いている。中型バイクに乗り始めた頃南海部品で購入したウルトラセブンのようなワンピース型のカッパをいまだに使用しているのだが、今まで一度たりとも雨の進入を許したことは無かった。しかし今回のツーリングでいつの間にか水漏れが発生し、マタの部分を中心に殆ど全身が水浸しになってしまった。カッパを脱ぐと相当みっともない状態になっている。
門別から左折すると風景は牧場地帯になり、日高を通過した辺りで再び霧がでてきて、途端に寒くなってきた。このルートは2回目で、前回ダートだった道も今回はきちんと舗装されている。霧も前回ほどひどくはない。前回は霧が深く道はダート、しかもバイクは400のオンロードだったものだから、下りのカーブが見えなくてもう少しで崖から落ちそうになるというとても怖い思いをした記憶がある。今回はそのような危険は無さそうだ。
しかし峠付近は一段と冷える。ずぶ濡れ状態の全身、特に手足が動かなくなる程冷たい。霧もやや濃くなったものの、無事に峠を通過した。高度が下がると共に気温が上がったようだが、相変わらず雨が降っている。昼食から一度も休憩していなかったので、峠のドライブインで休憩することに。霧のために景色は何も見えない。
とにかく全身ヌレヌレ状態で相当寒い。一気に峠を降り、そのまま帯広駅に突入した。時刻は既に午後6時だった。さて、本日の宿をどうするべきか。考える目線の先にある駅の案内板に「ヤドカリの家」という文字が目に入った。一度も利用したことがない噂のライダーハウスである。
ライダーハウスという所を初めて利用することに
我々のチームは既にライダーハウスを利用すると決めたが、GPZチームはビジネスホテルを探すと言って、帯広駅で別れた。
さっそくヤドカリの家へ電話すると、いつでも歓迎という。しかも近くに銭湯やコインランドリーもあるらしい。屋根があって、風呂にも入れて、洗濯もできる。条件としてはこれ以上無い程の満点だ。
「2名ですが、お世話になります」
即答で決定した。駅の案内図で位置を記憶し、少々迷いつつもなんとか現地に到着。ライダースハウスという存在は口コミで聞いていたので知っていたものの、利用するのは初めて。少々緊張しつつ入口を叩いてみたが反応が無い。思い切って入口の扉を開けて入ってみると、中には誰もいない。
「先輩、どうしましょう。」
「とりあえず着替えよう。」
とにかく濡れた服を早く着替えたい。ズーズーしいと思いつつ上がらせてもらい、濡れた服を着替えて荷物を片付けていたところに、オーナー(通称『パパさん』)がやってきた。改めて挨拶をし、さっそく銭湯とランドリーの場所を教えてもらい、休む間もなく出掛ける事にした。
洗濯物を担いで外に出ると、朝から降り続いていた雨は上がっていた。止むならもっと早く止めばいいのに。銭湯までは徒歩で10分程度。銭湯とランドリーが併設されているありがちなタイプ。とりあえず濡れた洗濯物を洗濯機にぶち込み、その間に風呂に入ることにした。雨ですっかり冷えて汗でネチネチまみれの体に、2日ぶりのフロは極楽であった。風呂から出ると洗濯は既に終わっていたが乾燥が必要なので、その間に近くで夕食とした。
風呂から戻るとオーナーの奥さん(通称『ママさん』)と、今日の宿泊者がいた。いろいろ雑談していると、オーナーに帯広の周辺を回る事を薦められ、なんだかその気になってしまい、オーナーの薦めるコースを全部回ると約束してしまった。
困ったのはカトーである。カトーはぜひ行きたい所があるという。その件を含めてこの先のコースを検討すると、どうやらここで一旦別行動にしたほうがいいらしい。という事で、明日はカトーとは別行動とし明後日、9日の夜に『霧多布キャンプ場』で落ち合おうという、実に画期的な話がまとまった。
もし、二人以上でツーリングをされる方は是非試されたし。一人で北海道を走る事は実に開放的で楽しいし、しかも行く先では友人が待っているという安心感もある。言い方が悪いかもしれないが、連れがいる事は意外と障害になる。もちろん連れがいる事ならではの楽しみもあるが、一人という解放感も是非味わってもらいたい。この両方の楽しみ方を味わえるのが、このやり方だ。ただし、双方の地理カンや、バイクの運転技術等の力量を見極める必要がある。トラブルが無いという保証は何処にも無い。
明日の予定が決定した所でお開きとなった。今日は久しぶりにぐっすりと眠れそうだ。当日のヤドカリの家の宿泊者は4人です。
本日の走行距離... 234km
次号その7 単独で帯広広域探検をすることに
- その1 再び北海道の季節が到来!
- その2 出発時の期待と不安は独特のものがある
- その3 とにかくひたすらやることが無い
- その4 下船後は右に進むのか左に進むのかそれが問題
- その5 ニセコ、そして羊蹄山を攻略
- その6 朝からの雨のせいで出発する気分まるで無し ←今ココ!
- その7 本日は帯広で連泊です
- その8 朝からご機嫌のダートを走り抜ける
- その9 ライダーのメッカ開陽台を目指す
- その10 とりあえず札幌に向かいます
- その11 昼過ぎに札幌で集合することになっている
- その12 皆に見送られて小樽へ向かう、そしてフェリーへ
- その13 上陸直前、またしても雨が降ってきた、そして帰宅
- 北海道ツーリング1987 その13
- 北海道ツーリング1987 その12
- 北海道ツーリング1987 その11
- 北海道ツーリング1987 その10
- 北海道ツーリング1987 その9
- 北海道ツーリング1987 その8
- 北海道ツーリング1987 その7
- 北海道ツーリング1987 その5
- 北海道ツーリング1987 その4
- 北海道ツーリング1987 その3
- 北海道ツーリング1987 その2
- 北海道ツーリング1987 その1
- 北海道ツーリング1984 その7
- 北海道ツーリング1984 その6
- 北海道ツーリング1984 その5
- 北海道ツーリング1984 その4
- 北海道ツーリング1984 その3
- 北海道ツーリング1984 その2
- 北海道ツーリング1984 その1
- 東北ぐるり一周18きっぷの旅 1998 その9