6日目の朝、目は覚めたものの起きる気がしなかった。段ボール敷きで毛布にくるまり寝転がったまま、大都市札幌の通勤風景を眺めていた。傍から見ればまるでホームレスのような姿だが、寝転がっていると一般世間とは違う超越した時間の流れがあると感じた。
チャリダーと徒歩組のほとんどは既に出発したようだ。ライダーといえば一部が出発しただけで、大半は未だゴロゴロと寝ていた。昨日感じた定位置が2派に分かれるというのは、この辺りに理由が或るかもしれない。
さーて、フェリーの予約はとってあるから安心と言いつつ、乗り遅れたらシャレにならない。拡げた荷物を素早く片付け、残った連中に挨拶して小樽に向けて出発した。道路は朝から渋滞気味だが、車の間を擦り抜けながら走ると、難無く札幌脱出に成功した。
札幌から小樽までは2時間もかからない。一旦フエリー乗り場の位置を確認してから、再び小樽の町に戻る。船内生活用の食料品、飲料水、娯楽品を買い込んだ。というのも昨日の宴会の中に新日本海フェリーの経験者がいて、船内はすこぶる退屈だという事、売店や食堂は利用者をなめてるような高価でしかも不味いという事。「お湯」は何時でもあるという事や、ヒマつぶしのノウハウを伝授してもらった。とりあえず御指導の通りに従ってみたワケ。
面倒な乗船手続きを済ませ外の駐車場で待機していると、おもむろに乗船が始まった。しかしさすがは長距離フェリー。順番が回ってくるまで小1時間もかかった。バイクの乗船は最後なのである。
乗船後真っ先にやるべき事は、当然ながら自分の定位置を探す事だが、船内はとにかく広い。予約した2等寝台の番号を見つけたらほっとした。さあて、これから敦賀到着まで約30時間はここが城だ。
でも、ゆっくりしてると出港してしまう。出港シーンはぜひ押さえておきたい。寝台に荷物をテキトーに放りこんだままデッキに出た。下を見ると、乗船前あれほど混雑していた駐車場はガランとしている。当然あれだけの車両が車両甲板に収まった事になる。長距離フェリー恐るべしである。
一人っきりで北海道に別れを告げた
デッキで海を眺めてたら出港時間が来た。最初フェリーはゆっくりと岸壁を離れ、さっきまで居た小樽の街が次第に小さくなった。やがて岬を回り込むと、船は振動とともにいきなり速度を上げた。
手すりから海岸線を眺めながら、これで北海道とはお別れだなと思うと妙に感傷的になってしまった。短い期間だが、確かに北海道を走り抜けたのだ。いつかまた来るぞと、一人静かに心に誓うのであった。
海岸線もいつしか見えなくなったので船内に戻った。ここで昼メシにしようと試しに食堂を偵察してみると、噂通り「ど高い!」。ざけんじゃねー、と捨てゼリフを残しつつ寝台に戻り、荷物からカップラーメンを取り出した。湯のある給湯室は既に確認済みである。
それから暫くは船内探検で時間が潰れたが、一通り回るともうやることが無い。寝台にいてもつまらんので、夕方になるまでデッキの上でゴロゴロと昼寝して過ごし、夕焼けの海を眺めながらひたすらぼーっとしていた。こういうのって、けっこうリッチな時間の過ごし方なんだろうな。それにしても見事なのは夜空だ、恐くなるくらい星がある。ここで天の川を初めて肉眼で見た。確かに川になっている。古代人は毎日こんな夜空を見て、何を考えてたんだろうか。
次号 長いようで短い旅も終わり、いよいよ帰還します
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