4日目の早朝は5時出発。早朝からチェックアウトするので昨晩のうちに精算しておき、鍵をフロントに置いて出発した。
本日の予定はまず屈斜路湖を冷やかし、今回のツーリング唯一にして最大の目的地、宗谷岬を目指そうという重要極まる日である。昨日の走行距離もたいしたものだが、今日も負けず劣らず長距離を走破する予定。しかしながら、ここ北海道の【時速60キロ×1時間=走行60キロ】という大法則に気がついてしまったので、おおよその到達時刻が読めてしまうのである。
とはいうものの、明るいうちに宗谷岬に到達したい。用心を見越して出発は朝の5時という事になってしまったのだった。
眠い目を擦りながら帯広を出発し、とりあえず足寄に進路を定めた。早朝いせいか単調な道路には車の影すら無い。実は昨日からそうなのだが、バイクの速度は平均して60キロ前後に固定されている。別に誰かに言われてではなく、自然にその速度になった。北海道における時速60キロというのは、景色を充分に堪能できる速度で、比較的遅いかな。でも、とりたてて苦痛でもないので、この後もずーっと時速60キロ前後で走っていたのでした。
十勝平野をおさらばすると道は森林地帯の中に入り、ゆるいアップダウンが連続するようになった。朝の優しげな光の中、道は相変わらずずーっと続いていた。
さりげなく足寄を抜け阿寒湖の横を通り抜ける。やがて弟子屈を左折すると、本日の第一休憩ポイント、屈斜路湖に着いた。ここでは湖畔を掘ると温泉が出るという。そういう噂だけ聞いていたのでさっそく見物に行くが、残念ながら誰もいない。ちなみにこの当時、和琴の温泉を知らなかったので、寄ろうともしなかった。
そういえば朝メシを食べていないのを思いだし、付近の店で軽く朝飯を済ませながら次のルートを検討した。知床の方へ向かうには少し遠回りだし、網走も同様だし、諦めるか。てなわけで、網走湖から能登湖に抜け、早くオホーツクを見ようゼイ、と決めた。進む方向は美幌峠である。
くねくね道の美幌峠を越え、網走湖が近づく辺りになると、道路は都市部と変わらない感じ。しばらく車の波にもまれながら途中、能登湖の方向に進路を変え、能登湖を横目に通り過ぎると、オホーツクは突然眼前に現れた。初めて見るオホーツクは、深く青く、そして波が荒かった。
サロマ湖を抜けると、宗谷岬に至るまで、海岸沿いを延々と走る事になる。途中、小さな漁村があったと思えば何も無くなり、たまーに街に入るとJRの駅があったりという繰り返しが飽きるくらい延々と続く。道は車やバイクが本当にたまーに走る程度。もう、退屈そのもの。場所は思いだせないが、立派な駅舎があるローカルな無人駅で休憩とした。
考えてみると、今回のツーリングは朝から晩まで常に走り続けている。従って日中の行動パターンは、「走る」と「休憩」。その二つしかない。当然、一日の走行距離は平気で600キロ以上になる。まあ、それもいいじゃあないの、バイクは走っていても楽しんだから。
そんな単調な繰り返しもいつの間にか「何も無い」という項目が長くなり、浜頓別を越えた辺りから風景が一変。行けども行けどもなだらかな丘の連続になった。この辺りになると、ずーっと「何も無い」状態が続き、いよいよ宗谷が近いと予感させてくれる。時間はまだ大丈夫。北海道の大法則によると、明るいうちに稚内に到着できる計算だ。
「るんるんるんるん」
メットの中で鼻歌を歌い、次第にハイになってくる気持を押さえながら走っていたら、いきなり「ぽんっ」という感じでついに宗谷岬に到着した。
「ここが日本最北端か~。」
海に向かってひとり感動し、西に傾きかけた光が反射してキラキラと光る海面を何となく眺めながらしばらくの間、ひたすら茫茫と堤防に座っていた。
そういえば到着した時からずーっとあの名曲が流れている。そう、「流氷の唄」です。あの歌ってね、すっごく耳につくんだよね。しかも忘れた頃にふと気がつくと、無意識のうちに口ずさんでいるというサブリミナル的な歌です。
ところで本日の宿はどこへ
最北端の店で「最北端証明書」なるものを手に入れ、本日の目的地、稚内へと駒を進めた。さて、今夜の宿はどうしようか。結局今のところ最初のインターでしか野宿してないじゃあないか。今夜こそ稚内駅で、と考えてはいたんですよ、一応。しかし、宗谷岬からつるんで走ってた連中が、稚内で民宿を探すというので、つい自分もそのプランに乗っかってしまった。いろいろ探した結果、稚内から少しノシャップ方面に入った釣宿に本日の宿が決まった。
通されたのは、だーっと広い大広間のような部屋で、全員そこで寝るのである。既に先客が数組いたが、まだまだ有り余る広さ。びっしりと入ったら果たして何人寝れるのだろうか。ちなみに、ここには女子用の大部屋もあるそうだが、今日の宿泊者はいないという。残念。
今日も相当の距離を走ったのだから、もうおとなしくしていればいいのだが、そうは出来ない尻軽ライダーの悲しさ。そこの宿泊者の半数程で、暗闇のノシャップ岬まで往復してしまったのでした。困ったものだね。
次号5日目、札幌で信じられない光景を目にします
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