2014年09月17日

東北ぐるり一周18きっぷの旅 1998 その4


山劇トラベルシリーズ
一瞬出遅れたかと思ったが



 2日目である。朝は目覚ましよりも早く目が覚めた。他の連中はまだ眠っているようだ。館内も静かなのでまだ皆寝ているのだろう。早めに朝の準備を先に整え、朝の散歩に出かける事に。普段の休日はこんな時間には起きる事は絶対ない。旅行時ならではの習慣だ。

 朝食時間前に部屋に戻ると、チャリダーの方が起きていた。聞くと今日は松島の方へ行くのだそうだ。朝食を頼んでいないので、荷物をまとめ次第出発するという。これでお別れとうことなので、その場で別れを言った。多分もう会うことはない。

 鉄ちゃんの方は相変わらずぐっすりと熟睡中。しかし、寝ていたら起こしてくれと頼まれていたので、無理やり起こしてやる。こちらの鉄ちゃんもまた朝食を頼んでいないらしい。今日は仙台駅まで一緒に行く事になっている。無理やり起こしたから、何だかボケーとしている。朝食はというと、相変わらず模範的な定番の朝食だった。今度はお盆の件は忘れない。

 次は何処で飯を食べれるか判らないから今のうちにしっかりと飯の食いだめをする。旅行中は何故かいくらでも腹に入る。

 部屋に戻ると既にチャリダーの姿は無く、もう一人の鉄ちゃんはすっかり元気になっていた。そろそろバスの時間である。ユースの料金は前払いになっているので、オーナーに軽く挨拶をしてユースを出る。バス停の前にコンビニへ向かう。昼の食料を買い込む為である。

 コンビニは昨晩のうちに下見をしておいたセブンイレブン。店に入るとまっすぐおにぎり売り場へと向かい、味違いのおにぎり4個と、念の為にお茶のペットボトルを購入。買わなければという意気込みの割には大したものは買わない。

 コンビニで買い物を済ませてからバス停へと向かう。バス停の位置や時刻は昨晩のうちに調査済。バス停前で暫く待っていたらバスが来たので乗り込んだ。仙台のバス乗り口は後ろで、料金は後払いであるのも昨日すでに経験済である。今のところ予定に狂いはない。順調に進行している。安心するのははだ早い?

 バスに乗るとほんの5分位で仙台駅前に到着した。昨日てくてくと歩いた距離にしたらそんなものだが、気分からするともう少し乗っていたかったかも。

 仙台駅の入口で相棒と別れ、自分はさっさと目的のホームへと向かう。しかしである、ホームには既に長蛇の列ができている。何回見ても同じ。これらの人達は皆「シーリアスライナー」に乗ろうとする連中に間違いない。

 「しまった!もっと早く並ぶべきだった!」
 何度後悔してもそれは後の祭り。多少は人が少なそうな列を選んでその後ろに並ぶ。自分が並んだ後も続々と列が延びていったので、遅れをとったとは言いつつ少しはマシだったようだ。と、勝手に言い訳をする。



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失敗の次は、またしても失敗が



 ホームで待っていると、その列車は6両編成でやってきた。なるほど、これだけの乗客だから列車も長いのか。

 つまらない感心をしている間に列車は目の前で停車し、間髪を入れずに扉が開いた。ホームで殺気立っていた乗客は近くの扉から我先に車内になだれ込んで、座席の確保に走っていった。

 列車の停車した位置というのが、ホームに指定してある乗車口とは随分ズレていて、たまたま立っていた目の前にドアが来た。もう何も考えないで車内に入ると、さっそく座席を確保した。とは言っても自分一人分だから何とでもなるのだが。

 やがて車内の座席は全て満席になり、それでもなお通路にも人があふれてきたその時に車内放送があった。

 「この列車は久慈行きですが、後ろ3両は気仙沼止まりです。」

 「え?」

 なんと後ろ3両は気仙で切り離すという。なーるほど、これでやっとこの列車の正体がわかった。この列車は元々JRの「南三陸」という快速で、その列車に三陸鉄道がコバンザメのように列車をくっつけて、仙台から久慈まで直通で走らせるのだ。時刻表の表記が意味不明だったのはそのせいなんだ。多分、乗車するときに冷静に行き先表示を見れば後ろ3両は気仙沼止まりとなっていたのではないだろうか。

 納得している場合ではない。確かこの車両は前から4両目のJR車両のはず。気仙沼で切り離されてしまうだろう。座席に荷物を置いてそーっと前の車両を偵察に行くと、前の車両も既に満席。今更前に行ってもどうしようもない。ここはさっぱりと諦め、確保した座席に住み着く方が得策と考えた。もう開き直りである。なんとかなるだろう、多分。

 8時33分、列車は定刻どうりに仙台駅を出発した。この列車の面白いところは、仙台から久慈までの間に7本もの路線を経由する所にある。

 まず最初は東北本線から始まり、子牛田から石巻線に入る。その辺りはのどかな田園風景が拡がっていて、リアス式海岸に入っていくなんて想像もできない。

 子牛田からものの十数分で前谷地に到着し、今度は気仙沼線に入る。その辺りから車窓に山が増えてくるが、相変わらずの田舎風景が続いている。

 前谷地から1時間程で気仙沼に到着するのだが、気仙沼駅に着いてから移動していては手遅れになるのではないか。少々フライング気味に前の方の車両へと移動する事にした。

 列車がいよいよ気仙沼に到着すると、乗客は気仙沼で一斉に下車してしまった。がらーっと空いた座席の前でしばし呆然としてしまった。これなら全然慌てる必要もなかったようだ。心配して損した。とは言いつつも、良さ気な席は既に占拠されているので、何事も早め早めというのは鉄則なのだろう。



三陸鉄道はトンネルだらけ



 気仙沼駅で後ろ3両を切り離したその姿こそ、本来のシーリアスライナーの姿である。この列車は他の第三セクターに負けないくらいの風変わりな車両である。まずは座席の構造。普通一両の中でベンチシートはベンチシートだけ、クロスシートは主にクロスシートだけという構成になっているものだが、この車両は両者が約半々になっている。

 そこまでなら他にもあるから驚きもしないのだが、この車両のシート構成が左右で対象になっていない。つまり、進行方向右側がベンチシートで左側がクロスシートだったり、それが車両中央を境に逆になっていたりするのである。説明わかる?

 それに加えて列車の車内に飲料水の自動販売機があるし、一番ヘンなのはロングシート座席の前にテーブルがある事。それが窓や床に固定されていたり、特急のように前のシートに折り畳まれて固定されているようなテーブルではない。パイプ足のテーブルがデンと無造作に置いてあるのである。どこにも固定されていない。これは一体何だ? 無造作に置いてあるが、それなりに面積が広いので、ロングシートにとってなかなか使い勝手がいい。

 ベンチシートの方ででーんと座っていると、隣に農業を営むような感じの中年のおっちゃんが来た。何となく話をするようになり、割と面白そうなおっちゃんだとわかった。聞けばやはり想像通り農家の人だった。そのおっちゃんは、東北は既に大体行き尽くしているのだそうだ。今日はたまたま三陸鉄道に乗ってみようと思って、一人で旅行をしているとのこと。今日はこのまま青森迄行くという。

 列車はやがて気仙沼から大船渡線に入り、海が見えたり見えなかったりしながら走り続け、盛駅が近づいてきた。確か盛からは先頭車両の指定席指定が解除されるはず。先頭車両だけは後ろの2両よりもシートが高級で座り心地がよさそうだ。

 そこで、盛駅が近づいてくると私とおっちゃんは小荷物を片手に何気なく先頭車両に移り、二手に別れて座席が空くのを待ち構えていると、たまたま目の前の座席が空いた。ラッキー。

 もうひとつ重要なことは、盛駅から列車がスイッチバック式に逆向きになるという事。要するに車窓のメインが逆になるのだ。今迄は進行方向右側が海だったのが、今度は左側が海になる。確保した座席も、ちゃんとその辺りは考慮してある。

 盛駅からはいよいよ純正の三陸鉄道である。車内放送もいかにも三陸鉄道らしいローカルな口調になった。車掌が交代になったのだろう。

 ちょうどお昼になったその時、車内販売で弁当販売があるという放送があった。

 「何だ今ごろ。弁当があるならあると言えよ。」
 「知らないものだから、仙台で買ってきたじゃないか。」

 全く同感である。車内で弁当があると分かっていたら仙台で昼飯の心配をしないで済んだのに。しかも食べてしまったではないか。などとプリプリしながらも売り子が来るのを楽しみに待っていた。ところがである。

 「申し訳ありません、弁当は売りきれました。」

 なんという不手際。もし弁当をあてにしていて売り切れてしまったら、昼飯を抜けと言うのか。仙台でおにぎりを買ってきたのは結果オーライだったのか。思わずおっちゃんと顔を見合わせてしまった。

 三陸鉄道の二重の不祥事に二人は激怒しつつも、ビールとつまみを山ほど買い込んで、昼間ッから酒盛りとなった。わっはっは。電車だと昼間から堂々とビールを飲めるんだぞ。ザマーミロ。(←誰に言っているのだろう?)

 それらのビールやつまみの大半はそのおっちゃんから奢ってもらってしまった。何だか申し訳ないが、こうなればもうイケイケである。

 三陸鉄道は海からかなり高い場所を移動していき、眺めがいいなと思ったらすぐにトンネルに入ってしまう。またそのトンネルの長いこと。海岸の目ぼしい観光名所は全てトンネルで通過してしまったと言っても決して過言ではない。

 途中、車掌がやってきて三陸鉄道の乗車料金を徴収しに来た。南線と北線を通しで乗車するので本来2850円を別途で支払うのかと思ったが、JRの企画券で乗車している人は半額でよいという。

 釜石で三陸鉄道から再びJR山田線に入り、宮古に到着すると只でさえ少ない乗客の殆どが下車してしまい、車内に残ったのは僅かな人数となった。



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 宮古から再び三陸鉄道に入る。こちらもまたトンネルが多い線区である。しかも長い。空の天気は先程から曇り空となり、山間部に入ると時たま雨が降ることもしまばしば。

 海とトンネルを繰り返しながら列車は15時52分、終点の久慈駅に到着。ここで本日初の乗換えである。ホームに降りて隣のホームに移るのかと思ったら、一度駅の外に出なければいけない構造になっていて、なんだかめんどくさい。



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 駅前に出てみると、駅前には殆ど人はいなく、店も 何も静まり返っている。おっちゃんは駅待合室で立ち食いうどんを食べていた。あれだけ飲み食いしておいてよく入るものだ。



いよいよ今日泊まるユースの事を考える



 16時31分、八戸線八戸行きが出発する。しかし、近くにはおっちゃんの姿は無い。きっと何処かには乗っているに違いないが、何だか眠くなってしまって、ウトウトしているうちに列車は海岸線を走っていた。三陸とは違い、海の近くを走っている。



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 八戸に駅が近くなる頃には空は次第に暗くなってきた。今日は結局一日中列車に乗っていた。しかし、今日の目的地はまだ先である。

 18時33分、八戸駅に到着。曇っているのか、空は既に暗い。列車から降りておっちゃんの姿を探すが、全然見つからない。確かにこの列車に乗っている筈。仕方ないので反対方向に停車している青森行きの電車の方へ行こうとして跨線橋を渡ったその時、別のホームに青森行きの特急がやって来た。

   「そういえば青森に行くって言ってたっけ。」

 そう思ってその特急電車を跨線橋の上から眺めていたら、まさしくその車両に乗り込むおっちゃんの姿があった。しかし、既に遅い。特急電車は早々とドアを閉まり、そそくさと青森に向けて出発してしまった。



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 その電車の後ろ姿を見て少し悲しくなった。あのおっちゃんにはいろいろ車内で奢ってもらったし、なによりも楽しかった。そのお礼を一言も言っていない。何も言わないで別れてしまった事がなによりもつらい。悔やまれる一件であった。

 今日の宿泊地は、ここ八戸から青盛方向へ電車で20分余りの向山にある「カワヨグリーンYH」に予約を入れてある。今日もまた長いこと列車に乗り続けてきたが、間もなく終わる。

 18時53分発の青森行き普通電車に乗る。既に日が暮れて窓の外は真っ暗である。電気の明かりが少ないところを見ると、この辺りは人家が少ないのだろうか。

 車内を眺めると、まるで18きっぷで旅行していますという若者ばかり。例外なく巨大なリュックを携えている。

 間もなく普通電車は本日最終地点の向山に到着。到着の少し前からずっと窓の外を眺めていたのだが、ずっと暗闇が続いている。本当にこの場所にユースがあるのだろうか。不安が膨らむばかりだった。





カワヨグリーンユースですっかりくつろぎました
次号 ユースの露天風呂が最高!

東北ぐるり一周18きっぷの旅 1998 その5





■東北ぐるり一周18きっぷの旅 1998のインデックス

<その1> 東北計画が発動し、いよいよ名古屋を出発する。
<その2> 電車をひたすら乗り継いで仙台に到着。
<その3> 超有名観光地の松島にやって来ました。
<その4> 三陸鉄道を乗り継いで八戸のカワヨユースへ。←今ここ
<その5> カワヨユースでは快適な温泉三昧。
<その6> 青森で飯を食べそびれ、弘前でリベンジを。
<その7> 憧れの五能線に乗って黄金岬不老ふ死温泉に入る。
<その8> 秋田と酒田で途中下車し、電車は新潟に向かう。
<その9> 新潟で省エネ観光し、憧れの寝台急行で帰宅する。



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posted by サンタ at 22:21| Comment(0) | 山劇トラベル | 更新情報をチェックする
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