山劇トラベルシリーズ |
噂の松島に到着したのはいいが? |
「Holiday」にも投稿しています <18きっぷで巡る東北ぐるり一周、大昔の旅> |
山中のトンネルを何本か抜けると、山の中腹っぽい小さな駅に到着した。ここが松島海岸駅である。
駅の改札を抜けると駅前は小さな広場になっている。まずは付近の地図を手に入れるため観光案内所へ行ってみる。案内所の隣で湾内観光船の客引きをしていて、やたらせかされる。乗船料金は1500円で所要時間は45分程度だというが、とりあえず止めておいた。
それならば何処へ行こうか。とりたてて目的が無いまま人の流れに従って海岸を歩いていくと、海にはたくさんの小島が浮かび、それぞれの小島の上はびっしりと松の木で覆い尽くされいる。これは誰が見ても「松島」であろう。
そういう理屈にまず感心しながら歩いていくと、観光バスが多数いて、人だかりしている一角がある。どうやらそこにある瑞厳寺という寺が、この辺りでは一番の観光名所らしい。何も考えずに中に入ってみた。
中はやたら団体観光客が多く、団体毎に観光ガイドがついているので、何食わぬ顔をして後ろに付いてガイドの説明を盗み聞きしてみる。どうやらこの寺は伊達政宗ゆかりの寺らしいとわかった。
有料になっている本殿の中に入ると至る所が立派な造りになっていて、正面側の襖は全てキンキンに豪華だし、欄間の彫り物もたいそう立派なものがあり、意外と見ごたえがあった。
次に寄ったのが島になって海岸から突き出している五大堂。ここの橋はすき間だらけで下をのぞくとはるか下に波が見える。ここを通るときに思わず手を握ってしまう事から、縁結びの橋とされているそうな。それがどうした。・・・いかん、腹も減っていないのに凶暴モードに入っている。
それから海岸線にずーっと歩いていったが、こりゃなんだね。低い所から眺めてもあんまし面白くないね。それとやたら人が多すぎるようだ。観光地だから仕方ないか。もう少し高いところから眺めないと松島というものがよくわからないのではないだろうか。船にも乗らないし。という事で目をつけたのが松島タワー。
観光地図によると松島タワーは松島の観光中心地から少し外れているようだ。でも、実際に見てみると近そうだったから気楽に歩いて行ったら、いつまでたっても近づきやしない。カンカン照りの中を歩いていたら、全身から滝のような汗が出て、着ているポロシャツの背中が肌にぴったりとくっつて、どえらい気持ち悪いったらありゃしない。
予想外に遠かった松島タワーは某ホテルの敷地内に建っていて、キップ売りを含めて3人の女性によって運営されていた。しかもタワー自体がお世辞にも立派とは言えない。いや、はっきり「オンボロ」と言ってしまおうか。しかしその高さだけは観光客を充分に満足できるものがあるようだ。
展望台から充分に松島全体を眺めることが出来る。こうして見てみると、いかに小島が多いかがわかる。この風景を見るだけでも、ここまで歩いてきた甲斐があった。少しは褒めておかないとね。
この展望台からは海の方向だけではなく、住宅街の方も一望できる。上から眺めると仙石線と東北本線の両方が見える。比べると、若干東北本線の方が遠いかな。
ここで時刻表を確認すると、仙石線よりも東北本線の方が都合がいいらしいので、迷わずに東北本線の駅に向かう。東北本線の松島駅まではタワーから15分程で着いた。空を見上げると、先程まであれ程晴れていた天気が、急速に曇りつつあった。
松島の次は何処へ行こうか考える
松島駅から仙台駅まであっと言う間に着いてしまった。仙石線よりも車両自体が新しいし、本線というだけあって複線のしっかりした線路は頼もしい限りだ。
仙台駅に着いたのは午後4時。今からユースに向かってもいいのだが、まだ少々早い。今からあと2時間くらい、何処かへ行くことが出来ないものか。そうだな、青葉城址辺でも行ってみようか。高いところが好きだし。
仙台駅前のバスターミナルで青葉城址行きの循環バスを見つけるのは少し苦労した。何処へ行ってもバスの行き先表示はわかりにくい。バスに乗ったら乗ったで、今度は料金の支払い方法が気にかかる。地元の人からは笑われるかもしれないが、よそ者にとってバスの支払いほど不可解なものはない。
第一に、前から乗るのか後ろから乗るのかという違いがある。仙台のバスは後ろ乗りだった。ところが、これが地元名古屋の市バスは前乗りの料金前払いである。実は同じ名古屋市内でも名鉄バスは昔も今も後ろ乗りの料金後払いだったが、あんまり乗る機会がない。結果、バスは前から乗るものという常識が身に付いてしまった。この法則が全国的に見ると圧倒的に少数派だと判ったのは、ごく最近のこと。次に、料金体系と支払い方法である。これは地方によって千差万別で、つりが出るもの出ないもの、両替の方法がバス会社によってバラバラ。
名古屋で市バスに乗ろうとする人達よ、気をつけたまえ。繰り返すが、名古屋の市バスは前乗りで料金先払いである。乗車時に料金を支払わないまま席に座ると車内放送で注意されるぞ。
青葉城址ではまさかの土砂降り
案内所の話だとここ、仙台駅から青葉城址までは約30分程らしい。それなら散歩時間を入れても2時間で丁度いい。旨い具合に事が運んだと一人喜んでいたら、いきなり唐突に夕立ちが降ってきた。しかも超大粒で、集中豪雨。バケツをひっくり返したとはこの事を言うのか、雨の中に一歩踏み出す男気がどうしても見いだせない。見る間に道路が川となり、低い所は池になった。途中の大学で下車する学生さんらの顔が引きつっていた。
そうはいうものの、自分だって人事ではない。旅行に傘は必需品だが、その傘は仙台駅で預けた荷物の中に入っている。まさか今日雨が降るとは全く予想しなかった。あんなに天気が良かったのに。
このような夕立は概して早く止むものと思い込んでいたら、青葉城址のバス停で下車するまでずーっと勢いが止むことはなかった。困った。バス乗り場の小さなひさしの下から当然青葉城址なんて見えない。傘が無くして一歩でも出ようものなら全身濡れ鼠状態になるのは目に見えている。
暫く待ってみたものの雨は止むどころかますます勢いを増している。身動きできずに固まっていたら反対側のバスがやって来て、もう何も考えないで条件反射的にそのバスに乗ってしまった。結局、往復1時間のバス賃だけ払って、青葉城址の入り口だけ拝んで仙台駅に帰って来たのである。なんだか馬鹿馬鹿しいったらありゃしない。
こうなると、さっさとユースに転がり込むのが得策である。とはいうものの、駅から歩いて行ける距離なのは間違いないが、この時になって、ユースの場所が判らない事に初めて気がついた。またまた困った。
とりあえず荷物を引き取り、駅の通路を歩いていたら警察が目についた。普段目の敵にしている警察だが、こういう時こそ利用するべきであろう。千登勢ユースに行きたい旨を伝えると、中にいた私服の警察官?が仙台駅周辺の観光地図を出してきて場所と進路を教えてくれた。試しに聞いてみるものである。
千登勢ユースは増築旅館の旧館という雰囲気
教えた貰ったルートを辿って住宅街の中を歩いて行く。駅前の周辺は近代的なビルが建ち並び人通りも多く賑やかな街だが、駅の反対側に入ると比較にならないくらい静かな住宅街である。この対象が面白い。先程まであんなに豪雨だった雨はいつの間にか止んでしまった。夕立にしてはひどい降りだった。
さて、目指す千登勢ユースはそんな住宅街の中にあった。外観はまるで旅館みたいだと思ったら、「千登勢旅館」と看板が建っていた。そこら辺のことはあまり突っ込んで聞かなかったが、ユース併設の旅館という事なのだろうか。
何はともあれこれが私の記念する最初のユースである。密かに気合いを入れ直してから玄関から中に入ると、既に先客がいた。
「今日お泊まりの方ですか?」
「はい。」
「今順番に説明していますから、少々お待ち下さい。」
どうやら今フロントで対応している人がオーナーらしい。待てと言うので後ろで静かに待つ。待っている間、オーナーの声が大きいので説明が良く聞こえてしまう。
「このユースの構造から説明します・・・・」
「食事の時はまずお盆を持って食堂へ・・・」
「お部屋はこの階段を昇って・・・・・・・」
「お洗濯物があるのでしたら・・・・・・・」
「シーツはお部屋を出られる際に・・・・・」
やたら長い説明に、後ろで聞いていてもアキアキしてしまった。
「お次の方、お待たせいたしました」
やっと私の番がやってきた。まさかとは思ったのだが、先程まで後ろで聞いていた説明を一から順番に全く同じことを繰り返すのである。結果、同じ説明を2度も聞いてしまう羽目になってしまい、指定された部屋に荷物を降ろすと何だかどっと疲れてしまった。
ユースの中はまるで合宿所かよっ
部屋は6畳程の和室だった。旅館風だからそうなのかもしれないが、巷で聞くところの2段式ベッドではないようだ。
オーナーの説明によると、今日の部屋は3人だそうだが未だ誰も居ない。この誰も居ないチャンスを活かして、夕食前に風呂を済ます事にした。今日半日さんざん歩いたし、おまけに雨にも降られたので着ているポロが恐ろしい状態になっている。本人は気がつかないが、隣の人はきっと迷惑するだろう。
風呂自体がやや狭く、湯船に3人も入ると満杯になりそうだ。風呂に入ると先客が一人いた。何となく挨拶すると、相手の方からやたら馴れ馴れしくいろいろ質問してくる。その態度に初めは少し面食らったが、一人旅をしていると人と会話したくなるという気持ちはよくわかる。どうやらその兄さんは自転車で東北を旅行しているとのこと。そして、夕方の豪雨に降られてズブ濡れになったのだそうだ。
2人にしては広い湯船でのんびりしていたかったが、夕食の放送があったので風呂はそこそこにして食堂へ急いだ。風呂で話をしたお兄さんは夕食を頼んでいないからと、外へ出掛けてしまった。
後々話を聞くと、素泊まりだけの人も案外多いのだそうだ。つまり、夕食を頼むとチェックイン時間に制約が出来てしまうからだそうだ。一日を有効に使うにはそれもアリだと思うが、今回は初ユースという事で今日も明日も夕食をお願いしてしまった。1階にある食堂に入って取りあえず席に着く。
「えーっと、何をするんだっけ。?」
ほんのさっき受付で聞いたばかりの話を既に忘れている。
「確かみそ汁があーだこーだと言ってたっけ?」
模範解答は調理室へ行ってお盆とみそ汁を貰って来るのである。そのお盆は食事後に食器を片付けるのにも使用する。
夕食は鶏の唐揚げを主体とした、ごく平凡な内容だった。せっかく仙台に来たのだから肉、できたら牛タンでも出せばいいのに。とも思ったがこの夕食設定価格では無理。それなら夕食を頼まないで外で食べてくるべきだろう。しかし、このような内容だとわかっていたら、夕食をパスしてもよかったな、というのが正直な感想。
私の周りに座っている連中の素性は知らないが、はっきりと3派に別れている。鉄ちゃんと、チャリダーと、ライダーである。その中でもやはりライダーとはよく話が合う。どこか共通点があるのだろうか。
4回もご飯をお替りをしてしまった満腹ハラをさすりながら部屋に戻ると、先程食堂にいたチャリダーと鉄ちゃんが居た。どうやら今日はこの3人が同室らしい。
さて、いよいよユースの中の人が増えて合宿所の様になってきたので、急いで洗濯物を持って外へ出る。ランドリーはユースから外に出てすぐ隣。経営はユースと同じである。
ランドリーは思いの他混んでいたが、「洗濯が終わっていたら持ち主が居なくても外のカゴに出しておいていいよ、混んでいるから。」と、オーナーが言うので遠慮なく出させて貰って替わりに自分の衣服をだーっと放り込む。
放り込んだらもうやることが無いので、ぶらりと近所を散策に出かけた。ついでに仙台駅行きのバス停を見つけ時間を確認する。明日はバスで仙台駅へ行こうかと考えている。それとコンビニの確認。というのも、明日は今日にも増して厳しい日程になっている。朝に仙台駅で列車に乗ったら夕方頃までずーっと同じ列車に乗りっぱなしになるのである。という事は、万が一に備えて昼飯を用意する必要がある。今日みたいなハラヘリは二度とゴメンだ。
洗濯が終わってからちょっとしたハプニングがあった。乾燥機の方も終わったら持ち主がその場に居なくても出すつもりで待ち構えていて、機械が停止してから出そうと思って扉を開けると、正面にブラとパンティーが・・・!。
いくらオーナーがいいよと言っても、これは触れない。順番を待つ周りの連中も、困った顔をして首を横に振るだけ。仕方がないから母屋からオーナーを呼んできて洗濯物を出してくれないかと相談すると、オーナーもやはり困った顔をするばかり。結局奥さんを呼んできて出してもらったのである。
乾燥機が終了するといよいよやる事が無い。部屋の中は暑いので戻りたくもない。それならばと、食堂で話が合った連中と連れ立って近所の酒屋に繰り出し、ビールとつまみを仕入れてきた。そうして夜空の下、ランドリーの前で即席の宴会が始まってしまった。
暫く外で涼しい風に当たってから部屋に戻り、明日のルートを発表しあってから時刻表で時間を再度確認し、ゴロンと転がってテレビを見ていたらいつの間にか眠ってしまったようだ。すっごく長い1日だったような気がする。
明日は朝から電車に乗り続けます
次号 カワヨユースはどこですか?
↓
東北ぐるり一周18きっぷの旅 1998 その4
■東北ぐるり一周18きっぷの旅 1998のインデックス
<その1> 東北計画が発動し、いよいよ名古屋を出発する。
<その2> 電車をひたすら乗り継いで仙台に到着。
<その3> 超有名観光地の松島にやって来ました。←今ここ
<その4> 三陸鉄道を乗り継いで八戸のカワヨユースへ。
<その5> カワヨユースでは快適な温泉三昧。
<その6> 青森で飯を食べそびれ、弘前でリベンジを。
<その7> 憧れの五能線に乗って黄金岬不老ふ死温泉に入る。
<その8> 秋田と酒田で途中下車し、電車は新潟に向かう。
<その9> 新潟で省エネ観光し、憧れの寝台急行で帰宅する。
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