山劇トラベルシリーズ |
宿泊したユースは宿坊も兼ねているらしい
18時57分、窪川に到着した。本日はこの地のユースで宿泊となっている。そのユースだが名前もズバリ『岩本寺』といい、手元の資料によるとどうやらここが『四国八十八カ所巡り第37番』の札所らしい。つまり、『宿坊』に泊まるって事になるの? という事で到着前から興味シンシンであった。
空の明かりも既になくなりつつあり、窪川駅の手前から降り出した雨は今もなお降り続いている。我々は共に傘を所持していないのでどうしようかと思うところに、駅の隅にある傘立てに無造作に立てられた数多くの傘を発見し、我々はこれをすかさずフリー傘と認定。これを恭しく拝借する事にした。
手元の地図によると駅を出てから左の方とあるのでその方向に進むが、ちっともそんな建物があるようには見えない。道路の両側にある寂れた商店街は殆どシャッターを下ろしている。たまーに通過するのは車だけ。周囲は次第に暗闇になってくるし、なんだか次第に不安になってきた。と、その時。先方に営業しているコンビニを発見。
「すいません、岩本寺をご存知ですか?」
「あ、それならここを少し戻って右に曲がるとすぐですよ。」
我々は安心した。
「でも、あのお寺ってユースやってたっけな~~~?」
我々は再び不安になった。
でも取りあえず間違いなく存在する事を確認したので、夜食の準備にする。一応電車の中で食べたものの、イマイチ足りない。
先程のコンビニの陳列台に地酒らしきワンカップ発見したので即座に保護することに成功。あとはツマミ類か。しかしここで心配なことが1つ。ユースの中には酒類禁止のお達しが出てるところもある。果たして岩本寺は大丈夫なのか。未確認なので何とも言えない。とりあえず見つからないことに越したことはないのでカバンの奥底へ隠蔽工作することに。
コンビニを出てから指示通りに道を曲がると路地の正面に参道があり、奥には門らしきものが見える。でも、その間に明かりが一つも無いのである。門の奥は真っ暗・・・
「ホントにここがユース?」
「真っ暗ですね。」
本当にここにユースがあるのかと疑いつつ、年季が入って不気味な門をくぐると右手の奥に建物があり、そこにおなじみユースの看板があった。大丈夫、ここはユースに違いない。
玄関に入ると誰も居なかったが、大声で呼んでみるとやっと人が出てきてくれたので早速受付けを済ませる。今回の受付けはカードに名前を書いただけだった。説明も何もない。後は好きにしてくれ、という感じ。
指定された部屋に入る。いや、正確には部屋ではない。一応畳敷きだが50畳程あり舞台までついている。きっと講堂か何かだろう。その部屋で雑魚寝となるのだが、先客は4人居るだけ。我々を含めても6人のみだった。
ここでは昨日同様食事もしないし歩き疲れていたのでさっさと風呂に入り、早々に寝る準備をしておいてから、一応周りの雰囲気を確認してから酒を取り出して、一人ちびりちびりとやっていた。ワンカップなのに意外と旨い。3本も購入したのにあっという間に全部飲んでしまった。そして速やかに布団の人となったのであった。二日目の日程はこれにて終了。
黒潮の町、土佐へと向かう
三日目の朝である。いつも旅行の朝は早く目が覚めるのが常。何となく外へ散歩に出ると、既に一人のライダーが出発の準備をしていた。彼は昨日大雨に降られたらしく、着るもの全て拡げて干してあった。それを手際よく畳んで鞄に詰め込んでいた。今回僕は電車利用なので荷物が少ないが、バイクだったならば今頃彼と同ように出発の準備に忙しかったにちがいない。
敷地内は誰一人として居ないのだが、本堂は既に開かれている。中は暗いなと言いながら中に入ると突然本堂の中の照明が点いた。センサー式になっているらしい。
本堂はどうやら最近になって建て替えられたらしく古さは感じない。自分としては特に信仰らしき事はしていないが、この旅行の無事を祈る。
我々もそんなにはゆっくりしていられない。足早に部屋へ戻って布団を畳み、荷物をまとめると早々に岩本寺を後にした。来るときに不気味だった山門は、明るくなってから見ても、なお不気味であった。
窪川駅の周辺には店らしき店は1件もない。唯一駅の売店が開いていたのが救いであった。朝食は売店のサンドイッチで軽く済ませることになった。 やがて駅のホームに高知行きの電車がやって来た。しかし、乗客は我々の他には殆ど見られない。7時8分。ガラガラの電車は窪川駅を出発した。
地図を見ると窪川は殆ど太平洋側の海の近くに位置しているのがわかる。しかし、ここは同時に四万十川の上流地域である。この奇妙な地形の答えは窪川から2駅目の六反地駅とその2駅目の土佐久礼駅の間にあった。ここの間で上流から下流への高度差を一気に降りてしまうのである。下りだから軽快に走り抜けていくのだが、逆から行くと相当の昇り勾配に違いない。また、窪川駅では淀んだ曇模様だったのが降りていく途中で完全に晴れ、下界ではすっかり快晴になってしまった。
電車は平野部を単調に走り抜け、駅に停車する度に乗客が増えていく。いつの間にか満員状態になってしまった。そして8時59分。電車は黒潮の町、高知へ到着したのであった。
さてさて、今度こそはホントの最終回。
いよいよ今回の旅行のメインイベント、瀬戸大橋と、讃岐うどん。
最後はいかなる結果が待ち受けているか。
次号 無事帰宅することが出来るのか?→四国半周18切符の旅 その10
より大きな地図で 四国半周18きっぷの旅 を表示
>>>山劇インデックスに戻る
【関連する記事】
- 北海道ツーリング1987 その13
- 北海道ツーリング1987 その12
- 北海道ツーリング1987 その11
- 北海道ツーリング1987 その10
- 北海道ツーリング1987 その9
- 北海道ツーリング1987 その8
- 北海道ツーリング1987 その7
- 北海道ツーリング1987 その6
- 北海道ツーリング1987 その5
- 北海道ツーリング1987 その4
- 北海道ツーリング1987 その3
- 北海道ツーリング1987 その2
- 北海道ツーリング1987 その1
- 北海道ツーリング1984 その7
- 北海道ツーリング1984 その6
- 北海道ツーリング1984 その5
- 北海道ツーリング1984 その4
- 北海道ツーリング1984 その3
- 北海道ツーリング1984 その2
- 北海道ツーリング1984 その1