2014年09月06日

四国半周18きっぷの旅 2000 その3


山劇トラベルシリーズ


辛うじてW氏を発見したのだった。


 大阪を過ぎるた辺りでおばちゃんの集団が乗り込んできた。おばちゃん軍団の中の一人が隣の空席を発見するやいなやズカズカと歩み寄ってきた。

 「ここ空いとるで」

 答える間もなく座られてしまったのである。それからというもの僕の隣に軍団が常駐して喋ること喋ること。何をそんなに喋ることがあるのかと言うくらいに喋るのである。他の座席の乗客は静かなものなのに、僕の周りだけスズメバチの巣があるかのような賑やかしさである。

 肝心のW氏はまだやって来ない。しかしここにきて列車が神戸駅に到着した辺りからは今迄増える一方だった乗客が、減少に転じてきて空席が増えてきた。

 「あっちの席が空いたで」

 今迄隣にいたスズメバチの集団は遠くにあるボックスの空席を発見するやいなや移動していった。途端に自分の周りに平穏なな空気が満ちあふれてきた。
 
 それにしても、既に車内は空いているのにW氏は未だにやって来ない。本当に大丈夫だろうか。絶対に大丈夫と心に言い聞かせつつも、不安は隠せない。

 乗っている列車は10時1分に姫路駅に到着し、今度は10時4分の三沢行きに乗車する予定となっている。乗り継ぎ時間はわずか3分しかない。やはりこの列車に乗っている間に合流しておかないとヤバイ。
 
 姫路駅に到着する10分前、ついに座席を放棄してこちらからW氏を探す事にした。普段慣れていない12両という列車は確かに長い。歩けど歩けど永遠に車両があるみたいである。車内は既に閑散として、空席率は30パーセントといったところか。

 すると、居たのである。見るとW氏はすました顏をして座席に座って、外の景色を眺めていたのである。

 「Wさんおはよう。」
 「あ、おはよう。」
 「おはようじゃないでしょう。ずっと待っていたのに。」
 「すまんすまん。」
 「ずっと隣を開けておいたのに。」
 「すまんすまん。」
 「ずっと待ってたのに。」
 「すまんすまん。」

 全く、怒れるやら笑えるやら呆れるやら。取りあえず無事に合流できたのでやっと安心した。ホント、人をさんざん心配させやがって。このおやじは。
 
 それから間もなく列車は姫路駅に入線し、次の乗り換えに備えて荷物を力強く握りしめた。

 3分という姫路駅の乗り換えでは無事に座れるどころか超満員。大体がこの3両しかない車両に無理がある。しかも姫路―岡山間は1時間に1本もないという超過疎なダイヤだから、混雑していてもいなくても乗るしかないのである。
 
 こうした状態で座れたのは岡山を過ぎた辺りでのこと。時間にして1時間半以上立ち続けていた事になる。これがW氏には相当堪えたみたい。

 12時45分。3両編成の列車は時刻通り尾道駅に到着した。目指すは坂道ではなくて、うどん屋である。日頃から腹は日頃から12時の定時に減ることになっていて、既に時刻は12時を過ぎている。心はうどん屋に奪われて上の空。
 
 何故そこまでうどん屋に拘るのか。とりあえず同行するW氏はおいておいて、今回の私的なテーマは『うどん』と決めているのである。特に四国の高松を本場とする『讃岐うどん』は全国的に有名である。
 
 それでもって、一般的に『うどんは安い』という認識がある。同じめん類でも蕎麦はともすると高級品の一つに分類される。中には安い蕎麦もあるにはある。しかしながら口コミにも旨いと評判の店の蕎麦は例外なく高価である。しかもたいていは量が少ないのが特徴である。グルメな人はそんな蕎麦を味わいながら少量食べて満足しているのである。
 
 しかーし。そんな旨い蕎麦でも腹いっぱい食べないと満足できない。通常ざる2枚で一人前のトコロを4枚は食べてしまう。その結果、余計に高く付く。という致命的欠点もあるにはある。
 
 その点うどんは違う。何処で食べてもたいていは安い。中にはうどん専門郊外店の『サガミ』や『いずみ庵』では高価なうどんも存在するが、それは天ぷら等の付属品が高価なだけあって、肝心のうどんだけに注目するとそれは目くじらを立てるほどの高価なものではない。
 
 今回の旅行もそうだが、18キップを使用している事からも想像出来るように、資金的にも大変苦しい。当然食費も苦しい。そんな内情にもうどんはぴったりではないか。まさに、貧乏旅行の友である。立派な大義名分だなぁ。
 
 特に今回はそれらの付属品を一切排除し、純粋に『めん』そのものを味わおう。という企画をたてたのである。もう讃岐うどんかどうかも関わらず、基本的に『ざる』。もしくは『冷やし』。あるいは『かけ』に限定しようと思う。

 と、言うわけで入ったのが尾道駅ビルの中の立ち食いうどん屋。この店は駅構内からも駅の外からも利用できるようになっている。ただし、店の中程に仕切りがあって、客は自由に行き来出来ないようになっている。
 
 ここでは残念ながらざるは無く、仕方がないのでかけで我慢した。だしは薄味で、麺は普通かな? という感じがした。何はともあれ腹が発する警報は無事に解除されたので、安心して店を後にしたのであった。




いよいよ尾道の町に繰り出したデコボココンビ。
尾道の町では何が起こるのか?

次号 時をかける坂に出会うことができるのか?→四国半周18切符の旅 その4





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ラベル:18切符 鉄道
posted by サンタ at 23:53| Comment(0) | 山劇トラベル | 更新情報をチェックする
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