2014年09月06日

四国半周18きっぷの旅 2000 その2


山劇トラベルシリーズ


早くもトラブルの予感がする。


 そもそも僕と同行W氏の住んでいる場所。僕は『岐阜』でW氏が『津』という、直線にして80キロ余り。鉄道に乗っても約2時間という時差が、今回の四国プランのネックになった。どう考えても、どこかで集合する事が不可能なのである。
 
 ごく普通に考えれば名古屋駅辺りで集合してから出発すればよさそうなもの。しかし今回のプランは、名古屋発の東海道本線下りの5時52分発の始発電車に乗る必要が有るためわざわざ名古屋駅に出向くことが不可能。さらにW氏も、その始発時間に名古屋駅に到着する事が不可能。
 
 このダブルパンチ的不可能を可能にするべく検討した絶妙な妙案を弾き出した。つまり、自分は岐阜から素直に東海道本線で行くが、W氏は津から始発の紀勢本線に乗り、亀山で関西本線に乗り換え、さらに柘植から草津線に乗り換える。すると、なんと米原からの新快速姫路行きに間に合ってしまうのである。

 要するに、自分が先に電車に乗り席を確保して待ってるから、草津から乗り込んだら探すように。という手筈になった。これはスリルがあるアクロバット技である。大垣での乗り換え時間は数分。W氏の柘植での乗り換え時間に至ってはほんの3分しかない。少しでもダイヤが狂ったら出会えない。本当に大丈夫だろうか。

 米原に到着した姫路行きの普通電車はすぐには暫くホームに停車したままである。米原ではその電車の後ろから車両を増結し、12両とする作業が進められている。名古屋地方ではこのような長大列車は中央本線以外は見られない。東海道本線では通常4両で
運行されており、通勤時刻のみ6両もしくは8両になる。昼間の閑散期には2両というオオバカヤロウ的な電車もある。

 その姫路行き普通電車は増結完了すると速やかに米原駅を出発していった。次に乗るべ電車は新快速姫路行きである。この電車はここ米原発と北陸本線側の長浜発があり、この時刻は長浜発である。果たしてこの電車がどのくらいの乗車率なのか。それ以前にどのような車両がやってくるのか。初めて乗る路線は不安でいっぱいだった。

 「間もなく普通列車姫路行きがホームにやって参ります・・」

 突然のアナウンスに驚いた。

 「姫路行き?」
 「普通列車?」

 時刻表によると、この時刻の普通列車は存在しない。その存在しない列車が待っているホームにやって来るという。急いで近くの駅員を捕まえて尋ねてしまった。

 「途中の野洲までは普通列車で、野洲から新快速になります。」
 「今から来る4両は米原発の車両で、後から来る長浜発の列車が増結されます。
  これで合計12両になります。」

 話を聞いて、やっと納得した。このような接続駅ではよくこのような時刻表に掲載されていない細かな不可解な事をやってくれるので、混乱する時があるのである。

 それにしても12両とは・・・・・。草津から乗り込んでくるW氏は無事、自分を探してくれるだろうか。不安はさらに高まったのだった。

 『普通列車』姫路行きは米原を定時で出発した。車両は見慣れない新型車両である。型番は222となっていた。

 それにしても寒い。乗ったのは先頭車両で、表示には弱冷車となっているのに関わらず、冷房が効きすぎている。周りの人も上着などを着込んだりしていた。この用意周到なところも、いかにも18キップの常連という感じがする。ビギナーはそこまでは考えないの
で、いつも寒い寒いとつぶやいている。

 7時26分。米原から乗車した先頭車両内に座っている乗客は10人にも満たないガラガラの状態であり、これなら楽勝と喜んでいた。しかし、草津に近づくに従い次々と乗車してきて、草津に到着する頃には座席の半分以上が埋まってしまっていた。そろそろ他の
乗客の視線が気になってくる。

 いよいよ電車は草津駅構内に進入した。駅ホームには予想以上の乗客が溢れていて、車窓からはW氏を確認することが出来なかった。やがて電車がホームに到着するとドカッ乗客が乗り込んできて、座席の殆どが埋まってしまった。が、僕の隣の座席は約束通り巷
のオバタリアンのごとく荷物を置いて開けてある。

 そして電車は草津駅を発車した。発車してからはW氏が何時やって来るかという事ばかり考えていた。

 「それにしても遅いぞ。」

 待てども待てどもW氏はやって来ない。新快速姫路行きは京都駅に近付くに連れて乗客が多くなり、座席の確保が心苦しいものになってきた。周りには立ち席の人も多いが案外空席がある事が多少心強い。

 「そこの座席、空いていますか?」

 恐れていたものが遂に来てしまった。見るとスーツを着た通勤のサラリーマン風の中年男性。いかにも手慣れているといった言葉だ。

 「申し訳ない。此処には人が来るのです。」

 苦し紛れに答えると、その男性は他の空いている座席に向かい、同じ言葉を使って、今度は無事座席確保に成功した。しかし、時々ちらちらとこちらを眺めるその男性の目は怪訝な疑惑に溢れている。そんな視線が自分に集中しているような気がしてならない。
 
 いつしか列車は京都駅を過ぎ、高槻をも過ぎ、いよいよ大阪に近付いてきた。車内に空席は殆ど無くなってしまい、事実上自分の隣が最後の空席と化していた。
 
 その間、隣の座席に座ろうとする人を断り続ける事数回。その度に疑惑の視線にさらされて正直心中穏やかではない。ホント、早く来て欲しい。何やってんだ、W氏。とは思いつつも、とりあえず限界までがんばってみようという開き直りの気持ちも出てきた。列車
は間もなく大阪に到着する。



果たして、W氏は無事に列車に乗れたのか?
そして、隣の空席は何処まで確保できるのか?

次号では笑撃の事実が明らかに!→四国半周18切符の旅 その3





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ラベル:18切符 鉄道
posted by サンタ at 23:12| Comment(0) | 山劇トラベル | 更新情報をチェックする
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