ゴールデンウイーク中に荷物の殆どを運び出したので、別の場所に移す荷物と不要なゴミが残った。一応は掃除もしたい。引渡し予定日の28日迄はまだまだ日数があるからいいさと油断していたのが大きな間違い。色々な用事が重なり続けてしまい、殆ど手を付けられないまま時間だけが虚しく過ぎていってしまった。ただ、ラッキーなのはこの5月中に粗大ゴミがあり、不要なゴミはそこで片づいてしまうという事。ウチの辺りの粗大ゴミはまだ無料なので、このチャンスを見逃してはいけない。
このゴミというのは、実はベランダに設置してある『倉庫』なのである。大きさは90×90×210くらい。これは約8年くらい前の事だが、実家が『地上げ』による移転を余儀なくされた際に不要となったスチールの倉庫である。その時に既にあちこち錆が出ているという状態だったが、使用する分には問題が無いのでウチで引き取ったという経緯がある。
これを次のアパートに持っていければいいのだが、今度のベランダには置くスペースが無い。第一、個別 に専用の倉庫(約0.75坪)があるから不要なのである。
古いからとはいえ捨てるのも勿体ないし、処分するのもお金がかかるし。ひとまずは周辺の人に譲れないかと声を掛けたのだが、皆面倒くさがってしまって、遠慮されてしまった。というか、掲示板でバカ大家が『貸倉庫』を作るらしいから、という理由で辞退した人も居たのである。さて、そうれならばどうしたものかと考えていた所に粗大ゴミのお知らせがあった。まさにベリーナイスなタイミングであった。
別の場所に移す荷物の方も何とか引渡し1週間前には移動を完了できたので、やっと掃除が出来る状態になった。んでも多分ね、いろいろ掃除をやっても結局は無駄になると思うんだよね。どうせ壁紙は全面張替えになるだろうし、ペンキ壁も全面塗り直しになるだろう。そうは思っても、半ば意地で徹底的に掃除をしてやったのである。でも、自分で言うのも何だけど、ウチは奇麗に住んでいた方だと思う。設備も壊してはいないし、壊れた換気扇なんかはさっさと自前で交換してしまったし。これで文句をつけれるものならつけてみろと、そのくらいの意気込みはあったのである。
さて、問題の引渡し当日がやって来た。どうせなら早いほうがいいからと、朝の9時に約束をしておいたのに、バカ大家は全然やって来ない。
とことん時間にルーズな奴だ。
暫く待つこと10数分。そろそろこちらから電話してやろうかと思ったら、下の方から声がしてきて、やっと現れた。でも相変わらず、『遅れてスミマセン』とは言わない。そういう奴である。
「それではまず、鍵を頂きます。」
「どうぞ」
ジャジャ~ン。静かなる戦いの幕は切って落とされた。
「ん~、これは合い鍵だね」
「え?」
なんと、ず~っと使用していた鍵が実は合い鍵で、予備に置いておいた方が本物の鍵だったのである。そんな昔の事なんかとっくに忘れていた。
取り敢ず軽いジャブを食らわされたが、バカ大家と一緒になってそれこそ『指差し』で各所を確認して廻った。とにかく、まるまる10年住んで居たし、決して大人しいとは言えない子供たちも居る。最初から敷金が戻ってくる事なんか考えていない。考えてはいないが、これ以上の持ち出しだけは断固阻止したい。
先ずは絶対に譲れない場所から説明に入った。最初はリビングのフローリング床。6帖の中に数ヶ所、『ぶかぶか』な部分が存在し、改めて見ると、誰が見ても要修理である。しかし、これは前大家との「抜けたら修理するから」という約束で『修理しないで』引き渡されたものである。10年前の当時はそれでも今よりはずーっとマシだった。それが、やはり年々状態が悪くなり、キッチンと廊下のフローリングに穴が開いて全面張替えて貰った際にリビングも張替えてくれと頼んだのだが、「悪いけどもう少し待って」と、言いくるまれてしまった。という経緯がある。
次に風呂桶。これも最初から相当にガタがきていたものだが、普通に使用する分には問題はないから「とりあえずそのままでお願い」と、頼まれたものである。
最後にリビングの天井。見上げると、6枚程天井のボードが交換されていて、そこだけ新しい。その周りのボードは古くて変色しているから相当にみっともないとも言える。これは確か何年か前の台風の時に『雨漏り』したのである。4階の建物の3階なのに何故雨漏りしたのか。確かな原因は未だに不明なままであるが、天井裏を見たところ上階ベランダ付近から進入していたように見えた。
この3件についてバカ大家はフローリングは総張替え。風呂桶は廃棄して新品を入れる。天井は全面塗装とは言っていたが、ウチ的には全面的免責を主張し、これらは不問となった。
あと、細かな設備関係で言うと、キッチンの釣り棚は最初から一部壊れていた。湯沸かし器は自分達で設置したが、新居では不要だから置いていく。使用に問題は無い。湯沸かし器の上部にある釣り戸棚の塗装が剥げているが、これも最初から。冷蔵庫裏の汚れは、生活していればこんなもの。等々・・・。
こうして話して行くうちに次第にバカ大家がブツブツと言い出したものだから、「なにぶんにも10年の昔の事だし、お互いに証拠も無い事だから、何でしたら今から前の大家の家へ行って話をしますか?」と言ったら黙ってしまった。
こう書くと、ウチは何だか前の大家に頼まれて随分我慢しているんだなと思われるかもしれないが、実はそうではない。廊下とキッチンの床に穴が開いた時はいち早く張替えて貰ったし、風呂の湯沸かし器は何度修理してもらったか分からない。下水パイプの掃除も何度かお願いしている。天井の雨漏りの時は暴風雨の夜中に布団を持ってやって来てくれた。いろいろとお願いする都度に気持ち良く応じてくれていたから、「そこまで言うならとりあえず様子を見とくわ」と、なるのである。決して我慢していない。
「奇麗に使われているから特には問題ないですね。ただ、押入の襖の板を破ってますから、それが追加になりますね。見積もりはこうなります。」
なんともう見積りと来た。伝票を見ると合計で『50万円』とだけ書いてある。内容明細は一切無く、完全にグロスである。
「1戸を修繕すると『大体50万円かかる』んですよ。ミニミニとかニッショーで話を聞いたら大体7対3という話を聞いていますので、そこから3割を住人負担という事にしています。調べたところ、お宅の場合は敷金が12万6千円入っていますので、あと2万4千円出して下さい。今までの方もこれで納得されています。」
この話はあらかじめ、最近退去した人からおおまかには聞いていたので驚きはしなかったが、その数字のいい加減な事。こんな見積りの仕方を今迄見た事も聞いた事も無い。
「ちょっと待って下さい。その50万円って何ですか?施工業者による見積り明細を見せて下さい。」
「今は持って無いです。」
「そもそも、この部屋のきちんとした見積りを出してある訳では無いですよね。改めてお伺いしますが、その50万円で何をするのですか?必要な原状回復ならともかく、商品価値を高める為のリフォームにはお金は払いませんよ。」
そもそもミニミニで聞いてきたとしている7対3という割合だって、細かな話し合い検討の結果 、平均するとそのような数字になっているようだという数字だと思うのだが、だからと言ってハナっから15万円を追加で頂くなんて理屈が通るのか。『リフォームの3割償却』っていう契約でもあるまいし、内容が全く見えていない。
しかし、今からそういった理屈を1から始めてもバカ大家の頭では理解できまい。それに、今交渉決裂したとしたらまた後日会わなくてはいけない。だだ、このまま部屋の中を原状回復したとすると、多分15万円では足が出るのではないかという気がするのも確か。それこそ大体の相場ってものがある。
「それなら、細かな数字を出さなくてもいいから、その50万円で一体何をするのかを書き出してくれないだろうか。」
「わかりました」
見ると、リビング及び和室2室(全て6帖)の壁紙張替え、和室2室の畳表交換、襖8枚張替え、襖板張り修理2枚、キッチン及び廊下壁全塗装、浴室壁全塗装、天井塗装、リビング床張替え、風呂桶交換、ベランダ障壁塗装、吊り金具交換、網戸交換、ベランダ内側塗装、ハウスクリーニング・・・ときた。
これは完璧な『リフォーム』の見積り内容であろう。そんな見積りを提示する方がおかしくはないか。大体、中の『ハウスクリーニング』は自分たちでやるから安く出来るって言う。『安く』と言う以上、きちんと業者としての発注があって、伝票があって、金銭の授受があるんだろうな。どうせ着服するだけだろ。もし業者に依頼しないのであれば見積はゼロだろ?・・・と思ったが、口には出さなかった。いずれにしても、正式な業者の見積りが無い以上、どんな数字も信用できない。
「この項目が何故ウチの負担になるのだ?」と、一つ一つ念を押すようにして質問してやると、バカ大家もいい加減キレてきたようだ。
「それなら、ここの襖の板張りを直して下さい。これ、修理すると35000円かかります。気に入らないのなら自分で業者へ発注してもいいですよ。それとも先程の24000円。どちらがいいか選択して下さい。私も裁判なんてやっている時間がありませんから。」
余程、かつての『勝手に部屋に入るな、今度入ったら訴えるぞ事件』が頭にあるらしい。実際、こちらもとんでもない事を言い出したら、出るところへ出て、即訴えてやろうを思っていた。しかし、どうやらそこまで目くじらを立てる事も無いようだ。バカ大家も早く縁を切りたいという口ぶりだ。
「では、ベランダの内側の塗装ってのが確か1万円って言ってましたよね。あれだけは絶対に納得できないから、その分引いて1万4千円にして下さい。」
「わかりました。それなら1万4千円という事でいいです。」
自分ながらに訳解らない事を言ってみら、それでいいと言う。実際自分もかなり面倒くさくなってきた。
「お金は、家賃と同じ口座に・・・」
「あ、いいです。今すぐ現金でお支払いしますから、領収書を切って下さい。」
これで終了した。結果損したのか得したのかは解らないが、これできれいさっぱりとケリがついたのである。長かった。ちなみに、領収書の但し書きを見ると、『リフォーム代一部負担金』となっている。やっぱりリフォームじゃないか。
さて、掲示板の後日談である。これはほんの1週間前の事だが、BMWの大学教授がテレビに出演したのをたまたまバカ大家が見ていて、1階ベランダで洗濯している奥さんに「出ていましたね」と声を掛けてきたついでに、「貸倉庫ってどうなったの?」と聞き返したら、「希望者が『少なかった』から止めにしました。」だと。それではどうするのかと聞くと、「テナントにします」と、シャーシャーと喋ったんだそうな。開いた口が塞がらないとは、まさにこの事を言うのだろうな。
それで、西側駐車場ってのはバカ大家一家総出で空き地の草刈りをし、ぬかるみに砂利を気持ち放り込んで、ロープで境界切りをして完成。どうやらアスファルト代をケチったらしい。雨が降ったらどうなるか、考えるまでもないと思うが。自転車置き場はまたまた日程が延びて、8月1日~31日完成予定だそうな。
もうバカ大家が何をしでかしても、既に僕の知った事ではない。平和だな~。本当にスッキリしたわ。 長かったシリーズもここまで。長々と読んで頂けた方、ありがとうございます。くれぐれもこのようなバカ大家に関わらないようご注意を。
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