2013年02月06日

山劇 No.073 酒酔い展示会 2

山劇/となりの山劇シリーズ
ついでに隣の会場にも乱入だぁ

 ビールの会場に入る時は気が付かなかったが、その特設会場のすぐ隣に、『現代アート展』がやっていた。

 「うん、やってるやってる。」

 一般的に、この手の展示会は「展示会」という名を借りた、「即売会」として世間では認識されている。(されてないって?)
 まぁ、いろーんな噂があるから、今迄近寄りもしなかったのだが、その日はビールを飲んでいて、少し気が大きくなっていたのも手伝って、「よぉーし、ついでにヤマガタでもラッセンでも観ていこうじゃあないの!」などと気合を入れて、単独でその会場に足を踏み入れてしまった。

 会場は思ったよりも広く思ったよりも客が居なかった。一瞬シマッタとも思ったが、もう後には引き返せない。何気ない顔をして展示してある絵を順番に見ていく事にした。すると、いつの間にか斜め45度右側後方にきれいなおねえさんが立っている。目が合った瞬間、一度入ったら逃がさないぞ!というようなネチネチ光線を、あくまでソフトに投げ掛けて来るのだった。

 「うっ、これが噂の・・・」

 という思いが頭の中をグルグルと巡ったが、そこは酔っぱらいの強み。

 「いい絵ですねーーー、今日は見てるだけですから!」

 と、わざとらしく棒読み調に強調して、降りかかる視線を振り払った。しかし、それしきで引き下がるお姉さんではない。

 「貴重」
 「またとない機会」
 「1枚は持つべき」
 「お買い得」

 なーんていう言葉を斜め後方45度から機関銃のように投げ掛けてくる。

 「今だと金利が安く・・・」

 と、さりげなく返済の仕組みを説明し、

 「1枚だけ差し上げるとしたら、どれがいいですか?」
 「どうぞお座り下さい、こちらで説明いたします。」

 適当に「コレ」と返事するとなんとその絵を下ろして、会場真ん中のテーブル前のイーゼルに掛け、更にタイミング良くコーヒーが出てくるではないの。この手際の良さは只者ではない。  イカン、イカン、イカーン。ここで座っては相手の思うツボ。この作戦は断 固阻止しなければならないと酔った頭で考えたワシは、

 「あ、あの絵がいいね!」

 これまたわざとらしく叫んで、その場を無事離脱したのであった。それからしばらくは、おねえさんがついてこなかったので、わりとゆっくりと絵を鑑賞し、大体一周した頃、再び例のおねえさんがやってきて、「コーヒーいかがですか?」と聞くのだが、ここもきっぱりと「すいません、今から仕事ですから!」と言ってやり過ごし、そそくさと会場を出たのであった。

 こういう危ない場所に長居は無用。見るものを見たらさっさと退散する事が1番の得策である。ビールに酔って足元がフラフラしてるのに、仕事!ってのも無いものだ。自分ながら笑っちゃうよね。



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ラベル:アート展 甘い罠
posted by サンタ at 23:32| Comment(0) | 本家山劇/となりの山劇 | 更新情報をチェックする
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