もう一つは「円盤鉄砲」と呼ばれる拳銃。タマは黄色い色をした10円玉位 の大きさのプラスチックの円盤で、モーゼルの銃のごとく上から押し込むようにして装填する妙ちくりんな銃である。
この円盤鉄砲のいい点は、壊れにくい事である。これは何にもかえがたい大切な事である。使用するタマ自体は多少高価ではあったが、タマの形が大きいし色が目立つ為、何度でも拾って再生利用ができたという点もまたエコロジー的に優れた長所であった。
その他、火薬を使用して「音」だけ鳴る銃もあったが、これはダメ。あくまでも「タマ」が出ない銃は遊びの中で使用してもらえない。さらにその変形で音も出るしタマも出るといった複合式拳銃もあるにはあったが、今度は高価という点がネックになってこれまた普及しなかった。
この時代、既に「空気銃」は存在していた。ただし、現在では絶滅種として指定されている「つづみ弾」と呼ばれるタマを使用する。この頃の空気銃は例外なく長尺物で、つづみ弾と呼ばれるタマを1発ずつ込めてはレバーでポンプアクションをするといったシロモノだった。しかしながら至近距離で段ボールを撃つとさすがに貫通はしないが、ぐぐっとめり込む程の威力はあり、近所の馴染みのプラモ屋に行くと主人がよく撃って見せてくれた。
こんな空気銃にも改良がある。タマをいちいち込め直すのは面倒くさいと思っていたら、込める部分が回転式になり、6発程連続で発射できるように進化されていた。当時の僕のクラスメイトはこの銃を持っていて、遊びに行くと部屋中弾だらけになっていた記憶がある。だが、そんな空気銃を見かけたのはそれが最後である。現在では既につづみ弾を使用する空気銃自体が絶滅してしまって久しい。
このようなのどかな時代が長く続いたのだが、ある日少年マガジンだかサンデーだか忘れたけど、グラビアページに「拳銃のしくみ」とか言って、実物のカットモデルのイラストが載っていた。それは今見ると何の不思議でもないイラストだったと思うけど、当時の銀玉 鉄砲しか知らない少年にとっては不思議なイラストに思えた。
第一タマをバラバラっと入れる所は無く、タマはグリップの中に入っているし、その数だって少ないし、そもそもタマを「火薬の力で弾頭を飛ばす」という概念が頭の中には存在しなかった。当然ながら「薬莢って何?」となるし、その使用済の薬莢が飛び出す仕組みが解説してあってもまるで理解できなかった。
そうしているウチに、仲間の一人が「いいもの見せてやる」とか言って見せてもらったのが、ずっしりと重い「モーゼル」のモデルガンだった。どうやら兄貴から借りてきたらしい。当時のモデルガンはすでに黒色の外観が禁止され、金属製は全て金色で着色されていたが、銃口は塞がってはいなかった。
その時見せてもらったモーゼルは正しく原寸大であったのか、小学生の手にはバケモノのような大きな拳銃だと感じた。そしてその友人は「こうやるんだよ」と言って、マガジンにタマを込め、銃を撃つマネをしてからシリンダーを引くと、チャンバー内のタマが飛び出して、同時に次のタマが装填されるのであった。これを自分の手で操作してみて初めて本物の銃の仕組みが珍しくて仕方がなかった。
一度に連続して撃つことができるタマ数が意外に少ないという事にも驚いた。テレビやマンガの中に登場する拳銃は何発でも撃っているので、あれが普通 だと信じていたのが実は違っているんだなと、その時初めて気がついたのであった。
そのモデルガン趣味の兄を持つ仲間は、ルガーP08、ワルサーP38、14年式等のオート式銃や、いろんなシリンダー式銃をいろいろと公園に持ってきては見せてくれたが、とりあえず欲しいとは考えられなかった。仮に欲しいと思っても、とても小学生の小遣い程度では買えるシロモノではないのである。
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