2013年02月02日

山劇 No.042 無言deバトル4

山劇/となりの山劇シリーズ
まさに魑魅魍魎の世界でした

 その退屈な開発担当者が引っ込むと、再び司会がやってきた。と同時に更に大きな音響でファンファーレが鳴り響いた。

 「お待たせいたしました。いよいよお待ち兼ねの抽選を行います。まずは抽選券の入場です。」

 思いっきりもったいつけて何が始まるかというと、会場入口で抽選券を入れていた透明な箱が舞台の上に上げられたのである。そして最初に挨拶したお偉いさんが再びやってきて、目隠しをする。当然その目隠しには何も細工がされていないという事を舞台前列の数人に確かめさせるのである。そうして安全が確かめられるとその抽選人は抽選箱の前に立ち、まずは箱の中をかき混ぜる。この抽選箱は完全に透明であり、これもまた細工がしていない事をアピールする。

 「それでは本抽選の前にまず、次点の抽選を行います。」

 この次点というのは本抽選で当選された人が何らかの理由で当選の権利を放棄した場合の予備・・・らしい。

 再び盛大なファンファーレの中、目隠しをした抽選人が抽選箱の中から一枚のカードを取り上げる。

 「発表します。次点に当選の方は、岐阜県多治見市からいらっしゃいました・・・○○さんです!」
 「おおーーーーー。」

 会場内は急にざわめきだした。

 「当選の方は手をお挙げ下さい。・・・はい、そちらの方ですね。今すぐ係員が向かいますので、そのままお待ち下さい。」

 その人は次点に当選なのに既に注目の的である。

 「それでは。只今よりセキスイツーユーホーム新築限定1棟特別抽選会、本抽選を行います。」

 先程よりも一段と大きなファンファーレと共にスポットライトが飛び交い、抽選人は抽選箱を慎重にかき混ぜる。会場内の人の目つきが険しくなり、力強く握り締めた手の中には汗がにじんでくるようだ。  そして、ついに一枚の抽選カードが選び出され、高々と上に上げる。会場内の緊張は極度に高まった。

 「発表します。キスイツーユーホーム新築限定1棟特別抽選会にご当選された方は・・・・愛知県春日井市からお越しの・・・  ・・○○さんです。」

 その瞬間に会場内に叫び声でも響くかと思ったが、何も起こらなかった。そして、ざわめきもしなかった。

 「ご当選の○○さん、どちらにお越しでしょうか。」

 少し間があってから、やっと当選者がわかった。丁度下の階の見えない辺りに座っていた年配のおばちゃんであった。

 「おめでとうございます。どうぞ、舞台の方へお越し下さい。皆さま、盛大な拍手をお願いします。」

 そんな事を言ったって、盛大な拍手は起こらない。何となく力がこもっていない拍手がバラバラと鳴り響いた。
 それにしてもその当のおばちゃんは、なんだか気が動転して腰が抜けたみたいで、横にふらふらとしながらなんとか舞台に上がった。そのおばちゃんに司会者がインタビューするのだが、司会者が何を聞いても「はあ・・」としか答えない。何だか目の焦点が会っていない。
 おばちゃんは舞台の上で花束と共に巨大な金ピカの鍵と目録を手渡され、バラバラと鳴り響く拍手の中、ふらふらとしながら元の座席に戻って行ったのだった。一応これで今回の目玉 の抽選は終了した。

 「続きまして、来場記念おたのしみ抽選会を行います。」

 これは会場内の合計20人の方に今日現地から空輸されたばかりのカニをプレゼントするのである。本抽選に当たりそこなったほぼ全員の目が再び輝きだした。

 「それでは、まとめて4名ずつ発表致します。」

 合計20名の名前が次々に発表されていった。しかし、残念ながらこれにも当選しなかった。カニの抽選が終わると当選者は舞台の上に、そうでない大多数の人達は席をたって静かに帰路につくのであった。その後ろ姿には一抹の寂しさが漂っていたかどうかは定かではない。

 直接現地に来た人はこれで終わりだが、バスを仕立ててやってきた我々はこれから再びバスに乗って帰らなくてはいけない。係員の誘導に従ってバスに戻り、点呼が済んだら出発した。

 「えー、皆さま今回は誠に残念ながら当展示場からは当選者が出ませんでした。しかし、お楽しみ抽選の当選者はいらっしゃるようで、少しは安心致しました。」

 説明の後、全員に弁当の配付があった。小さい子供にも割り当てがある。だから、ウチは5つも弁当をもらってしまった。
 実は今回の抽選会にやって来る前に、食事がでるかどうかという議論がなされていた。というのは、抽選会の時間が時間だし、岐阜に帰ってくる時間が大変遅くなるので、食事無しではおれないだろうという予想である。
 カミさんは、只でさえバスを仕立てる料金がかかるのに、食事まで出したら大出費になると、あんまり期待できないのではないかと言う。しかし私の意見はその反対で、どうせこの後に営業アタックが始まるに決まっているんだから、そんなメシごときで気分を害してもらっては元も子もない。私が営業マンだったら、ここは今後の展開を考慮に入れて、きっちりと飯を食わせ、気分的にも貸しを作るだろうと主張した。
 その予想の結果がこの弁当であった。内容はまあ無難ないわゆる幕の内弁当だが、温かなお茶付きで、恐らく1000円から1500円位 の内容と見た。
 バスは行きと同じように吹上から名古屋高速に乗り、名古屋駅のツインタワーを横目に快走し、楠から東名阪に入り、国道22号線を経由して名神高速に乗り、岐阜羽島インターで降りて、そのまま出発した住宅展示場へまっしぐらに進んだ。時間は既に夜の9時を過ぎていた。

 こうして、住宅抽選会の初体験は終了した。それにしてもかなり疲れた。今後は抽選会がある度に行きたいと義母が言っているので、何度かはあるのだろう。私としてはとりあえず、抽選会で当選するとはあんまり考えてはいないが、絶対に当たらない・・・とも限らない。万が一当選したらラッキーという程度である。おしまい。



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ラベル:山劇 住宅抽選
posted by サンタ at 17:28| Comment(0) | 本家山劇/となりの山劇 | 更新情報をチェックする
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