2013年02月02日

山劇 No.029 木工の鉄人

山劇/となりの山劇シリーズ
名人は慌てないものだw

 幼稚園で「お父さんと作ろう木工教室」というイベントがあり、その開催日は朝からむっちゃ暑い日曜日だった。しかし、カミさんから「きっちり行くように、さぼっちゃ駄 目よ!」と厳命されていたので、やむなく重い腰を上げて出かけることになった。どうやらおサボりは許されない様子。

 幼稚園までは歩くには距離があるので、自転車の後ろに息子を乗せて出発。車で行く場合はメインの道路で行くしかないので、遠回りする事になる。が、あまのじゃくな私は近道をして、確かこっちだった筈だと、小川が流れる川沿いを適当なカンで走った。幼稚園に行くのは入園式以来である。その場所もウロ覚えだったし、方学的にあっているかどうか多少心配していたものの、何とか見覚えのある建物を発見してほっとした。幼稚園入口周辺には沢山の親子がたむろしていて、よく見ると、子供よりもむしろ父親母親が嬉しそうな顔をして興奮しているように見える。会場は早くもバトルロイヤル的ヤル気熱気に包まれていたのだった。まだ早いって。

 幼稚園の中に入っても、特に知り合いが居る訳でもない。それで何もしないで立っていても疲れるだけなので、来たるべき戦いに向けて体力の温存を図ろうと、涼しげな木陰で休んでいたら、やがて集合時間になった。ひとまず全員各教室に入ると、先生が軽く挨拶をし、一通りの説明があった。

 「材料の木材は所定の場所に用意してあります。金づちとノコギリも用意してありますが、数が少ないので、順番に使って下さい。釘と木工ボンドも用意してあります。必要なだけ持って行って下さって結構です。現在は9時10分ですが、10時40分には終了して、後片付けをして下さい。終了後、制作した作品を持って、再びこの場所に集まって下さい。・・・云々カンヌン。」

 要約するとそんな話だったと思う。そしていざ「始めて下さい」の号令が出されると共に一斉に制作が始まった。そうすると子供は殆どそっちのけ。おやじ共がドーっと材料置き場に集中し、いろいろな形の材料を次々と吟味していく。欲しい分だけ手に取る人も居れば、手当たり次第に取って行く人もいたりして、見ているだけでも面白い。各種の戦利品を手にしたおやじ共は、あらかじめ陣取ってあった場所に戻るやいなや制作を開始していた。その風景は、かの「料理の鉄人」の状況にも似ている。とにかく、時間は90分しか無い。無駄な動きが許されないのだ。

 私は少し出遅れてしまった。おかげで目ぼしい材料が手に入らなかったものの、適当にみつくろった材料を手にし、開いている場所を探して腰を下ろした。

 「何を作るの?」

 息子が私に聞いたが、実は何も考えていなかった。周りの人を見ると、材料を自宅から持ち込んでいたり、きっちりと設計図を書いてあるような人も居た。少なくとも、私以外の全員は、何を作るかはあらかじめ考えてあったようだ。

 反面、こちらは材料を目の前にして10分位どーしようかなー、と、考えていて、なんとなく、平材で木枠を作って、中に木っ端のレリーフをぶら下げようと決めた。一応、それとなく要りそうな道具は持ってきてある。んで、面白かったのはねー、周りのお父さん達はみんな自分の作品を作るんだと、それこそ真剣に制作しているんだよね。反面 こちらはいきあたりばったりもいいところで、「ここにクギでも打ってみるか!、よし、お前ここに釘を打ってみろ。」と、のんびりと息子に釘を打たせていた。当然たいしたものは出来はしない。

 そうしてのんびり構えていると、担任の先生や、ヘルパーのおねえさんやらが周回してきて、いろいろ話かけて来る。多分ね、この会のもうひとつの目的は、日頃表に出ない父親を観察する事ではないだろうかと思う。とすると、私の場合どんな評価になったのだろう。かなり心配。(またカミさんに怒られる)

 そうしているうちに、なんとなく形が出来てきたので、仕上げに「えいっ」と屋根をつけて完成と見なす事に決定。時計を見ると、制限時間はまだ20分も残っていた。でも、そんなことも気にしない。残った材料をさっさと元に戻し、きれいさっぱりと片付けてしまった。

 「あと10分です」

 終了時間予告の放送があった。周りの父親は、それこそ大変だとばかりにラストスパートに入った。その表情は真剣そのものであり、そして、寡黙に喋らなくなっていった。反面、私は早々に切り上げてしまったので息子を自由に遊ばせておいて、再び涼しい木陰で飄々と休んでいた。そうしてるうちに時間が来て、順番に教室内に集まっていった。集まった作品を見てみると、大きな作品、立派な作品、面白い作品が多くあり、その中で私は多少恐縮してしまったが、「ま、いいか。」と開き直る事にした。

 待ち時間の間、何となく教室内を見回すと、先生の机の上にマジックがあるのが目に付いた。そこでほんの即興的に素早くレリーフに魚の絵を描き込んで、私と息子の共作を『魚の棲むレリーフ』と命名した。それはムリがあるだろう、なんて言ってはいけない。

 その後、子供だけ教室に残し、親御さんは遊戯室に集合し、園長先生の話が30分程あった。話が終わるとまたまた教室に戻ったのだが、既に子供同士の品評会は終わっていたようだった。息子にどうだったと聞いたが、はっきりとした返事を聞けなかった。その木工作品は、その日のうちに持ち帰りとなり、現在は玄関近くの電話脇に置いてある。カミさんは「見せしめだもんね」と言って、笑った。



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ラベル:山劇 幼稚園
posted by サンタ at 12:50| Comment(0) | 本家山劇/となりの山劇 | 更新情報をチェックする
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