2013年02月02日

山劇 No.012 猫騒動の巻

山劇/となりの山劇シリーズ
猫の鳴き声が聞こえる!

 よく、猫が車の上やエンジンルームに進入するという話はよくあるらしいが、実際にお目にかかった事は未だかつて無かった。しかし、ついにその時が来たのだった。少々おおげさ?
 それはある休日のこと、馴染みのメンバーが久しぶりに集まって昼間ッからカラオケを楽しんでいた。それから駅西にある有名らしいお好み焼き屋で晩飯を食べ終わってから、次はゲーセンだと意気込んで車で移動しようとした時、車(テラノ)の方から猫の鳴き声が聞こえたのである。

「ニャー、ニャー、ニャー。」

 それは確かに車の下辺りから聞こえたから、一応車に乗り込む前にそこら辺りを確認したのだが猫の姿は見えなかったし、泣き声も聞こえなくなったから、何処かに逃げたのだろうと思って車に乗り込んだ。

 それから5分も走った頃、突然後ろのシートに座っていた奴が言った。

 「おい、猫の声が聞こえなかったか?」

 車内ではCDをガンガンにかけていて、とても猫の鳴き声などきこえやしない。 ・・・筈。

 「何かの聞き間違いじゃないのか」
 「うーん、そうかなー。」

 そうしてまた5分もたたない頃・・・・・・・・・・

「ニャー、ニャー、ニャー。」

 今度は確かに猫の鳴き声が聞こえたのである。車に乗っている4人全員が確認した。運転手は青ざめた。

 「おい、今すぐ車を停めろ。どこでもいい。」

 もう慌てたの何の。すぐに車を道路の端に寄せて停めて車から降りると、下の方から一瞬猫の声が聞こえた。声はそれ以来聞こえなくなってしまったが、逃げた様子も無いので、やはり何処かに猫がいるのではないかとボンネットを開けたり、車の下から覗いてみたが、猫の姿は何処にも無いし、血痕や異臭もしない。それにしても改めて眺めたテラノの車体下はすき間だらけだ。どこからでも猫が進入できそうな感じがする。

 「何か猫に悪さをした記憶は無いか?」
 「猫が死んだらそのうちに臭って来るから大丈夫。」
 「とりあえず聞かなかった事にしたらどうだ。」

 他の奴等は勝手なことを言うが、車の持ち主は真剣である。車の何処かに潜り込んでいるだけならいいが、例えばエンジンの熱で火傷をしていたり、バネ下や回転部分に引っ掛かって怪我でもしていたらヤバイと考えたのである。第一それが原因で猫が死んでしまったりしたら、気分的に大変よろしくない。

 「いわゆる『猫憑き』の車って事になるのかな」
 「車を売る時にはちゃんと申告しないといけないな」
 「忘れた頃に声が聞こえたら怖いだろうな」
 「その時はミラーに猫の姿が映るのかな?」

 我々はますます勝手なことを言う。
 駅西の割と交通量がある道端に車を停めたものだから、横を通る車の運転手はジロジロこちらを見ていくし、通行人だって、何かアヤシイ事をやっているのではないかという顔で見ていく。

 そのうちに近所のバアさんが見物にやって来て、それなら餌で釣れば出てくるのではないかとわざわざ自宅からイワシを持ってきてしまうし。それが 好意で持ってきてくれたものだから要らないとも言えないし。我々は、ホント、困り果てていた。

 それから30分もたっただろうか。ついに猫を発見したのである。車の後部、ガソリンタンクと車体の間の狭いすき間に猫が入り込んでいた。見るとそれは小猫のようだった。猫を発見して喜んだのはつかの間のこと。今度はその猫を出そうにも出てこれないのである。後部のタイヤハウスのすき間から辛うじて足に触れるので、足を掴んで無理やり出そうとしたのだが、猫が苦しむだけ。どうも足を踏ん張っているだけでは無いようだ。しかも脅えた猫はどんどん奥へ行こうとするし。別の奴が車の下へ入り込んで、手探りでその辺りを探ると、どうやら猫の頭がガソリンタンクと何かのパイプの間に挟まってしまって抜けないらしい。場所はわかったが、何しろ手が届かない狭い場所なので、何ともしがたい。

 「猫を出してくれってJAFに言えるのかな?」
 「例え来てもらってもどうやって出すんだろう?」
 「いざとなったら切るとか」
 「何を切るんだよ!」

 とりあえず、ボルト止めで取り外せそうな部品は取り外し、なんとか手が入るようにし、上と下から猫を掴んでいろいろ動かしてみると、中でも広そうな場所がある事がわかった。それならば、思い切ってそこから何とか無理やり出してみようという事になった。これで出なければ、冗談でなしにJAFを呼ぼう。事態はそこまで切羽詰まっていた。一人は車の後ろで交通整理をやっているので、我々3人がかりで猫を押さえつけながら、頭が挟まっているすき間から徐々に頭を通 し、嫌がる猫が踏ん張る足をはがしながら追い出すと、やっと狭いすき間から抜けた。ついに猫の救出(?)に成功したのであった。猫を見つけてから1時間はたっていた。

 なんとか救出した子猫はすっかり脅えていたが、先程のイワシを与えると食べるので、まるっきりノラでもなさそうだ。それにしても、猫は勿論のこと、我々の手は真っ黒である。

 その後、子猫は入り込んだと思われるお好み焼き屋の前で放免になり、めでたく一件落着したのであった。めでたしめでたし。



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ラベル:山劇
posted by サンタ at 00:25| Comment(0) | 本家山劇/となりの山劇 | 更新情報をチェックする
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